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米国の利上げ4%超えも 物価ピーク見通せず

同時に公表される参加者の経済予測では、利上げの到達点が4%超に上方修正される公算が大きい。インフレ圧力は幅広い品目で根強く残り、ピーク越えを見通せない。

13日公表の8月の消費者物価指数(CPI)は前月比0.1%の上昇となった。ガソリン価格の下落でマイナスを予想していた市場は不意を突かれ、株安・金利上昇で反応した。「大半の分野でインフレが再加速し、FRBが(物価抑制のため)やるべきことは多いと示唆する内容だった」(米債券運用大手ピムコのエコノミスト、ティファニー・ワイルディング氏)との受け止めが広がった。

モノの価格上昇が再び加速

まず目立ったのはモノの価格上昇だ。価格変動の大きいエネルギー・食品を除くコアの商品価格の前月比上昇率は、6月の0.8%が7月に0.2%まで縮んでいたが、8月は0.5%と再び伸びを高めた。衣料品や新車が上昇し、中古車の下落率も0.1%と市場の想定より小さかった。「特に自動車分野で供給制約のさらなる緩和と在庫の積み増しが必要なことを示した」(バンク・オブ・アメリカ)

ここ数カ月間は経済活動の再開でサプライチェーン(供給網)の混乱が解消に向かい、サービス消費への移行も相まってモノの価格上昇は落ち着くとの期待が高まっていた。米証券ジェフリーズのアネタ・マルコウスカ氏は「現在のインフレ圧力は供給制約よりも需要の強さから生じている」とみる。

エネルギーを除くコアのサービス価格も前月比上昇率が0.6%と、いったん減速した7月(0.4%)から伸びを高めた。家賃などの住居費が上昇幅を拡大したほか、医療サービスや教育サービス、自動車整備なども軒並み加速している。「労働力不足がサービス業の(人件費などの)コスト上昇を招き、それが消費者向けの価格に転嫁されている」とPNCフィナンシャル・サービシズのカート・ランキン氏は指摘する。

「9月1%利上げ」予想も

FOMC参加者の多くは9月の利上げ幅について具体的に言及していないが、ウォラー理事とセントルイス連銀のブラード総裁はCPI公表前の段階で0.75%の利上げを支持する意向を示していた。CPIの結果を受け、米ゴールドマン・サックスなど金融大手は相次ぎ利上げ見通しを上方修正。多くは0.75%の利上げを確実視しており、米国野村証券のような1%の利上げ予想も出てきた。

次のFOMCで示される参加者の政策金利見通しも上方修正される公算が大きい。パウエル議長はインフレ抑制をやり遂げるため、早期の利下げ転換を控える考えを示している。次に示される2023年末の政策金利は今回の利上げの到達点を示すことになる。

政策金利の予測引き上げ必至

6月段階の見通しは22年末が3.4%、23年末が3.8%だった。9月に0.75%の利上げを実施すれば、年内に会合を2つ残して政策金利が3.0~3.25%に達するため、上方修正は必至だ。金利先物から算出する「Fedウオッチ」は年内にも4%を超える予測になっている。政策金利が4%を超えればリーマン危機前の08年1月以来となる。

9月に0.75%の利上げを実施すれば、3月にゼロ金利政策を解除してから半年で利上げ幅が3%に達する。現行の金融政策で目標にしているフェデラルファンド(FF)金利がこのペースで上昇すれば1981年以来だ。

レーガン政権は81年10月に景気後退入りを表明したが、当時のボルカーFRB議長はそれでもインフレ抑制を優先して金融引き締めを続ける姿勢を堅持した。利上げの効果が時間差で実体経済に負の影響を及ぼすのはここからだ。パウエル議長の覚悟が問われる。