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銀行の脱年次改革、たそがれ50代こそ焦点 金融PLUS 金融グループ次長 藤川衛

若手や中堅を管理職に登用したり、中途採用を拡大したりするなど新たな動きが出てきた。改革の焦点が若手や中堅に向きがちで、シニア活用の視点が足りないといった声が聞かれる。

就職人気の急落で危機感

就職人気ランキングでトップ10の常連だった3メガバンク。順位はここ数年で急落した。マイナビと日本経済新聞の2023年卒の大学生の就職人気ランキング(文系総合)では三菱UFJ銀行が21位、三井住友銀行は34位、みずほフィナンシャルグループは43位だ。銀行にはカルチャーの基盤となっている人事制度を変えないと、競争力の源泉である人材が確保できないという強い危機感がある。

銀行の人事制度は同期の中から支店長や部長、役員、そしてトップを選ぶシステムで、50代になると銀行本体に残れるのはごくわずかだ。選抜から漏れる多くの人は50代前半で関連会社や取引先の企業に出向・転籍する。40代後半にさしかかると、通称「たそがれ研修」と呼ばれる案内が届き始め、銀行本体を離れた後のキャリアを考えるようになる。

人事改革の大きな方向は年次にとらわれず、能力に応じてポストを配分し、報酬を決めるというものだ。若手や中堅が抜てきされれば、シニアが就けるポストは減ってしまう。脱年次を目指しながらも若手の登用とシニアの活用は両立が難しく、50代の銀行員からは不満の声が漏れる。

シニア活用を目的に人事制度を改定する銀行も出てきた。りそな銀行は2021年から60歳の定年を従業員本人が最長で65歳まで選べるようにした。65歳で定年を迎えた後に再雇用制度を利用すれば、最長70歳まで働くことができる。意欲と能力のあるシニアが活躍できるような環境整備に力を入れ、50代後半の部長・支店長は5年前と比べて倍増したという。

三井住友銀行は20年にメガバンクとして初めて定年を65歳に延長し、51歳以降の給与水準を引き上げて長く働ける環境を整えた。公募制度を拡充し、シニアが自らやりたい業務にチャレンジできるようにした。社外への転職も支援する。外部の企業に移る人にはセカンドキャリア支援金(割増退職金)を支給している。

減る支店長ポスト

労働パフォーマンスを支店長、部長、役員といったポストで処遇することは一定の合理性と従業員からみても納得性はあるが、店舗の統廃合で年々ポストは減っている。経験やノウハウがあるシニアがいるのに、ポストが限られるために能力を生かし切れていないとすれば、不満もたまりやすい。マネジメントポストの選抜から漏れてしまうとやる気を失う人もいる。

東洋大学の野崎浩成教授は「特定分野における能力が高い人材は年齢無制限の再雇用機会を与え、役員などマネジメント層こそ新陳代謝を促すために任期を定める。任期が終了すれば、経営人材として事業会社で活躍してもらうくらいの大胆な改革が必要」と提言する。

銀行員の実質定年は50代前半から半ばとあまりにも早い。65歳や70歳まで働くとすれば、15~20年近くのセカンドキャリアを考えなくてはならない。若手や中堅はシニアがどういったキャリアを築くのかをみている。人事改革の成否はシニア活用策にもかかっている。