Q 変動型の住宅ローン金利はどのくらいですか。
A 住宅ローン比較サイト「モゲチェック」を運営するMFS(東京・千代田)によると、2022年9月時点でメガバンクとネット銀行は平均年0.4%台、地方銀行が同年0.6%台(調査対象の各銀行が公表する最優遇金利を集計)でした。最近は年0.2~0.3%台を提示する銀行や、借り換え向けに期間限定で金利を下げる銀行もあります。
Q 最近は金利が上がる例もあると聞きますが。
A 住宅ローン金利は大きく固定型と変動型に分かれます。全期間固定型は完済までの金利が一定で、金利水準は債券市場の国債利回りなどを参考にします。今年に入り長期の国債利回りの上昇を踏まえ、金利は上がる傾向です。変動型は半年ごとに金利を見直します。短期プライムレート(短プラ)と呼ばれる1年未満の期間で優良企業に貸し出す際の金利を目安にするのが一般的です。09年以降、大手銀の短プラは変わりません。
Q 目安が変わらないのに、なぜ金利が下がるのでしょうか。
A まずネット経由での手続きの普及が挙げられます。銀行は窓口などで人が対応するのに比べ費用がかからず、金利を下げられます。不動産流通経営協会の調査によると、ネット経由で住宅ローンを組む人は増えています。ネット銀や店舗などがある銀行のネット専用商品を利用した人の割合は、17年度調査では合計2割ほどでしたが、20年度には約5割です。
Q ネット銀はローンの金利が低い印象があります。
A ネット銀は店舗を持たず低コストなのが強みです。ほかの商品の販売につなげるため、長期間の取引となる住宅ローン販売を強化する面もあるようです。auじぶん銀行のように、グループ企業の商品との「セット契約」を条件に金利を下げる例もあります。

Q ほかの銀行はどうですか。
A 店舗のある銀行もネットに力を入れています。みずほ銀行は21年度にネットで申し込んだときの最優遇金利を年0.3%台に下げました。ネット上で手続きが完結するようにしたことなどで、費用を大幅に圧縮しました。以前は全体の2割だったネット経由の申込件数が4割に増えたそうです。
Q 約半分の人はネットを利用していないともいえますね。
A これまで大手銀や地銀は提携する不動産業者からの紹介で契約者を多く獲得してきました。しかし、ネット銀も不動産業者との提携に力を入れるようになり「すみ分けがなくなった」(大手銀)ため、競争が激化し、金利を下げざるを得なくなったようです。地銀もこの1年ほどで金利が下がっています。

Q 低金利は歓迎ですが、銀行は続けられるのでしょうか。
A 野村証券の高宮健リサーチアナリストは「過去数年で大手銀や地銀はコスト削減などが進み、金利を下げても従来より利益が出せるようになった」と解説します。銀行にとって住宅ローン事業の主な収益源は利息収入と融資の手数料です。金利が下がっても契約が増えれば手数料収入が伸びます。
Q 変動型は金利上昇時にリスクがあると聞きます。
A 住宅ローンは返済期間が長く、将来の金利の予測は困難です。返済計画は慎重に立てるべきでしょう。住宅金融支援機構の直近の調査では、住宅ローン利用者の約7割が変動型です。中には金利上昇時に借り換える想定の人もいます。ただ、ニッセイ基礎研究所の福本勇樹金融調査室長は「一般に金利上昇時は長期の金利が短期より先に上がるため、変動型から固定型への機動的な借り換えは難しい」と話します。
(川本和佳英)

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