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動けぬ政府・日銀見透かす 円安、投機筋の売り加速 7月末比の下落率、主要通貨で突出

政府・日銀は為替介入など是正策を講じないとの見方も「売り安心感」につながっている。主要通貨のなかで下落率は最大。円買い要因は乏しく、下落に歯止めがかからない。

 

鈴木俊一財務相は7日午後、円相場が対ドルで24年ぶりの安値を更新したことを受け、「足元の動きは円安方向に一方的に振れている。継続すれば必要な対応をとる」と述べた。具体的な内容を問われると「必要な対応は必要な対応だ」と明言を避けた。

市場では発言への円買いの反応は乏しかった。「けん制の度合いは強くなっているものの、具体的な介入の可能性を示唆する内容ではなく、むしろ円売りに対する安心感が広がった」(邦銀の為替ディーラー)という。

円売りの手掛かりとなっているのは米国との金利差だ。本来、為替相場の変動要因は貿易収支や景気動向など幅広い。米国の物価高のようにドル安・円高の要因もある。ところが、最近の市場では金利差に着目したトレードが支配的だ。

スイスのヘッジファンド、EDLキャピタルのエドゥアール・ドラングラード氏は「日本と海外の金利差が広がれば、日本の投資家は高い利回りを求めて海外投資を加速させるだろう」と話す。日本人による円売りが増えれば円相場は「1ドル=150~170円まで下落する」とみる。

 

 

こうした海外ファンドを勢いづけたのが、8月下旬に米国で開かれた経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」だ。

米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が利上げ継続への強い決意を改めて表明し、欧州中央銀行(ECB)の高官も相次いで利上げの必要性に言及した。一方、黒田東彦日銀総裁は「緩和継続以外に選択肢はない」と強調し、差が改めて浮き彫りになった。

今月6日にはオーストラリア準備銀行(中央銀行)が0.5%の利上げを決定すると円売りに弾みがついた。三菱UFJ銀行の井野鉄兵氏は「国内外の金融政策格差というテーマに沿っていれば、何でも円売りの材料になっている」とみる。

世界の通貨を見渡すとドル高の側面が強いものの、円安も顕著だ。7月末に比べた対ドルの円の下落率は6.7%とG10(主要10カ国・地域)通貨の中で最大。主要通貨以外と比べてもアルゼンチンのペソ(6.6%)や韓国のウォン(5.5%)より下落している。

 

 

海外勢による円売りは続きそうだ。外資系銀行が日本法人から本国の本店に送金する円の量は、春ごろから増加傾向にある。円を調達して売る動きを反映しているとされる。20兆円を超えていた金融危機以前に比べ、まだ水準は低い。

円売りの歯止めとなる材料はみあたらない。海外中銀の利上げは続く。政府・日銀も「口先介入を除けば、基本的にはただ見守ることしかできない」(ゴールドマン・サックス証券の馬場直彦氏)とみられている。

円買い介入は1997~98年以来となるが、当時は日本の金融危機やアジア通貨危機など例外的な経済状況だった。現在の円安は「日米両国が自発的に行っている金融政策などファンダメンタルズが主因」(馬場氏)とあって、米国に受け入れられにくい。米国はインフレ抑制のためにドル高を望んでいる。