くら寿司は6日、2022年10月期の連結営業損益が9億200万円の赤字(前期は26億円の赤字)になると発表した。従来予想の28億円の黒字から一転赤字となる。仕入れコストや燃料費が高騰する中で高単価メニューにシフトしたが、客足が遠のいている。持ち帰り需要を取り込み、新型コロナウイルス下の勝ち組業態とされた回転すしが転機を迎えている。
売上高は前期比24%増の1824億円で、従来予想から63億円下方修正した。新型コロナ感染の「第7波」の拡大もあって、最需要期である7~8月の来店客数が当初計画から大幅に減少した。コロナ下でも積極的な出店を続けたことで増収は確保するが、当初の見込みを下回る。
純利益は54%減の8億8400万円。時短営業などによる助成金収入で黒字を確保するが、従来予想を19億円下回る。くら寿司の岡本浩之取締役は「原材料費や光熱費、運送費、人件費など、あらゆるものがコストアップしている」と話す。
同時に発表した21年11月~22年7月期の連結決算は、売上高が22%増の1347億円、営業損益は3億8200万円の赤字(前年同期は8億1700万円の赤字)だった。
回転すし業界では業績が悪化している企業が目立つ。「スシロー」を運営する最大手のFOOD&LIFE COMPANIES(F&LC)は、21年10月~22年6月期の連結営業利益(国際会計基準)が32%減の123億円だった。魚の仕入れコスト増などが響き、売上高営業利益率は6%と、20年10~12月期の12%と比べると縮小傾向にある。
「かっぱ寿司」を運営するカッパ・クリエイトは、22年4~6月期の連結営業損益が3億5000万円の赤字(前年同期は10億円の赤字)。営業損益は20年4~6月期から赤字傾向が続く。米国など海外の店舗数が国内より多く、円安の恩恵も受けた元気寿司の22年4~6月期の連結営業利益は24倍の5億3800万円だが、国内事業の売上高営業利益率は1%に満たない。
コスト増を受けて、スシローのF&LCは5月、いち早く値上げを発表。くら寿司なども220円メニューを増やすなど、単価の引き上げに動いている。一方で大手各社はこれまで「1皿100円(税抜き)」を前面に押し出してきたため「100円均一を壊すと売り上げや客数に悪影響を及ぼす」(国内証券アナリスト)。
日本フードサービス協会(東京・港)によると、7月の外食産業の全店売上高は前年同月比で15%増。「回転ずし・持ち帰り弁当」は3%増で、「ファミリーレストラン(洋風)」の18%増などに比べて伸び率が小さい。
8月の既存店売上高をコロナ禍前(19年8月)と比べると、くら寿司は4%減、元気寿司は6%減、カッパ・クリエイトは17%減、F&LCのスシローは21%減の水準だ。特にスシローの場合には「おとり広告」などの相次ぐ不祥事によるイメージ悪化が響いている。
F&LCは10月から郊外型の店舗で最低価格を1皿110円(税込み)から120円(同)に引き上げる。くら寿司も値上げを検討中だ。ただ、業績改善につながるかは不透明だ。SMBC日興証券の皆川良造シニアアナリストは「値上げは単価上昇・原価率の改善効果はあるが客数減で相殺され、大きな増益要因にはならない」と指摘する。
コロナ感染者数の減少やインバウンド(訪日客)の復活などで客足の回復も期待されるが、割高感のイメージを払拭して客足を伸ばし、コスト増を吸収していけるかが今後の各社の業績を左右しそうだ。
(張耀宇、松川文平)

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