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セリーナ・ウィリアムズ 次のステージへ(下)「褐色の女王」扉ひらく 苦しい経験も後進の糧に

女性、特に褐色の肌を持つ女子テニス選手は熱狂的に支持する。

 

20歳のレイラ・フェルナンデス(カナダ)は「私たちのために戦ってくれた。全ての選手のために道を示してくれた」といい、大坂なおみは「彼女がなし遂げたことの産物が私」。中でも熱心なのが今季の全仏オープン準優勝の18歳、コリ・ガウフ(米国)だ。

「白人がほぼ独占していたスポーツを書き換えた」とガウフは言う。「セリーナ登場前、私のような(黒人)女性のアイコンはいなかった。世界ランキング1位が自分と似たような(肌の)人だから、成長する過程で『自分は違う』と思うことはなかった。これが彼女から得た一番大きなこと」

多くの人がセリーナにひき付けられる理由も端的に説明する。「女性、特に黒人女性は、そこそこで甘んじてしまいがち。でもセリーナはそうじゃない。高めていこうとする。彼女と何度か話して感じた」

女性やマイノリティーの多くは、多数派の人たちが無意識にする"扱いの違い"を感じたことがあるだろう。それに気づいても「仕方ない」と流していくものだが、セリーナはしない。それが摩擦を呼び、時に怒りを爆発させ、たたかれても試合で結果を出し、正当な扱いを得てきた。

「選手として苦しい経験を何度も経てきたけれど、次世代の選手たちはもっと楽に進めるんじゃないかな」とセリーナは言う。一般的にはパワフルな印象が強いが、記者会見での話し方は落ち着いており、ウイットに富んで面白い。仲のいいテニス選手も多く、本人は明かさないものの、若い選手たちにも積極的に声をかけているようだ。

「時々アドバイスをくれる。どうやって自分は乗り越えてきたかとか。内容は教えない!」と大坂もうれしそうに話す。バッシングや姉を射殺されるなどつらい経験を持つセリーナは、大坂がメンタルヘルスの問題を訴えたときにも温かいコメントを出している。

全米オープンでは多くの現役選手が、自身も大会中にもかかわらずセリーナの1回戦を見守った。同じ日に試合があったガウフはテレビ観戦の予定を生観戦に切り替えた。「8歳の頃からセリーナとビーナスを見るためだけに毎年、全米に来た。本当は大会中、会場に残りたくないけれど、人生に一度の体験だから」。初戦を突破したガウフはスタンドでセリーナの試合を観戦していた。