グローリー系、着服被害20億円か 経理一任が落とし穴に

府警は着服総額は20億円超に上るとみている。社内では長年、容疑者1人が経理業務を担当。出入金をチェックする仕組みもなく、被害を拡大させた。

 

多田容疑者は2021年12月~22年2月、コインロッカー事業などを手掛ける「グローリーサービス」(GS、大阪市)名義の銀行口座から32回にわたり、インターネットバンキングで自らの口座に計約3億9千万円を振り込んで着服した疑いが持たれている。

グローリー側の府警への申告では、被害総額は約21億円。ネットバンキングによる資金移動を約350回繰り返して15億円超を着服したほか、社内の金庫から売上金などの現金を抜き取ったり、売上金を金庫に入れずに着服したりして5億円超を得ていた。

グローリーの社内調査委員会がまとめた報告書によると、着服した資金のうち17億円を馬券購入費に充てていたほか、飲食代や遊興費に使ったとされる。

多田容疑者は05年にGSに入社し、一貫して総務部門に所属。15年には総務課長代理となっていた。

入社以降は資金管理など経理業務をほぼ1人で担当。振込送金業務を行う同社口座のネットバンキングシステムは、同容疑者の使用するパソコンのみが接続できる設定で、売上金などを納める金庫の鍵も管理していた。

報告書は同容疑者が「金庫内の現金の集金から銀行入金、会社の口座からのネットバンキングによる振込送金業務を単独で実施できた」としている。

社内規定はネットバンキングの振込送金業務に、上司である出納責任者による承認を必要としていたが、実際には承認なしで運用。金庫内の現金と入力された売上金額が一致しているかを確認する「突合作業」なども実施していなかった。

グローリーの財務部担当者は20年5月以降、GSの資金状況の不審点に気づき、同容疑者や上司に繰り返し警告して是正を要請。GS社内でも上司が担当役員に対し、属人的な業務遂行を問題視する指摘をしていた。度重なる警告への対応を怠った結果、被害を食い止められなかったとみられる。

企業の危機管理に詳しい真武慶彦弁護士は「出納責任者の承認を必要とする社内ルールが形骸化し、1人の裁量で大金を動かせる状態にあったのが問題」と指摘する。

その上で「中小に限らず大企業の子会社でも現金を扱うのが実質的に1人になってしまっている現場は珍しくない。預金口座を親会社で集中管理したり、配置換えのタイミングで社内ルールを再確認したりするなどの体制強化が必要だ」と強調している。