コロナ長期化で「息切れ倒産」 ゼロゼロ融資で過剰債務

帝国データバンクによると、7月の倒産件数は2020年3月以降では初めて3カ月連続で前年同月を上回り、コロナ関連倒産も5~8月で計683件と前年比22%増えた。実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)などの支援を受けたものの、過剰債務で再建を断念する「息切れ倒産」が生じ始めた。

8月末までの判明分を集計したコロナ関連倒産で最も多いのが、飲食業。横浜中華街の老舗中華料理店「聘珍楼(へいちんろう)横浜本店」を経営する聘珍楼(横浜市中区)は横浜地裁から破産手続きの開始決定を受けた。佐賀県庁の展望階レストランなど計4店の飲食店を運営するサンタフーズ(佐賀市)は7月末で事業を停止し、自己破産申請の準備に入った。

飲食店の苦境の背景には、休業や時短営業の協力金支給の終了後も客足がコロナ禍前の水準に戻っていないことがある。

都内の居酒屋経営者はコロナ禍で当面の運転資金として約2千万円の融資を受けた。客数はコロナ前を下回り、返済に十分な資金を確保できていない。月々の返済の約3割に別の融資資金を充てる自転車操業を余儀なくされているといい「これ以上借りると本当に返せなくなる。今の状況が続けば閉店を考えなければ」と打ち明ける。

老舗高級中華の「聘珍楼横浜本店」は閉店に追い込まれた(7月撮影)

ホテルでも、ランドーナージャパン(名古屋市)は8月、名古屋地裁から破産手続きの開始決定を受けた。1日あたりの感染者、死者数が過去最多を更新した「第7波」では外出制限を伴う強い措置はないものの、コロナ前の稼ぎ頭だった訪日外国人(インバウンド)の回復は遠い。ゼロゼロ融資や協力金などで倒産件数は歴史的な低水準に抑えられてきたが、地方企業の破綻が表面化している。

コロナ関連以外を含む全体の倒産件数はまだ感染前の7割ほどの水準だが、コロナ関連倒産は22年に入って一貫して増えている。帝国データの阿部成伸・情報編集課長は「コロナ前から業績不振だった企業を中心に、感染長期化による景況低迷に耐えきれなくなっている」とみる。

日本政策金融公庫によると、21年3月末までに実行されたコロナ関連融資の57%は22年3月末までに元金返済が始まった。全体の13%は予定通りの返済が難しいとして追加融資や条件変更を申し出たといい、重い返済負担が倒産を急増させている。

全国信用保証協会連合会のまとめによると、融資を返済できなくなった事業者の返済を肩代わりする代位弁済の件数は7月に前年同月比4割増えた。「足元の倒産増加が影響している」(中国地方の信用保証協会)とみられる。中小企業の大半は客数減だけでなく足元の原材料価格上昇にも苦しんでいる。

同連合会によると、保証債務残高は7月時点で約41兆円とコロナ前(19年度)の約2倍に膨れ上がっている。東京商工リサーチの原田三寛・情報部長は「過剰債務に陥った事業者もある。感染がある程度収束しても倒産の増加傾向は変わらない」とみている。

(地方財政エディター 杉本耕太郎)