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販売相次ぐデジタル証券 不動産や社債の少額購入に魅力 波乱相場で再注目 インカム商品再点検(4)

最近、投資家が再注目しているインカム商品。株式相場が不安定な展開を続ける中で、配当や分配金を得ることができるのは魅力だ。インカムゲイン目的の金融商品の特徴を解説する本シリーズ、最終回はブロックチェーン(分散型台帳)技術を活用した新しい商品として話題を集めている「デジタル証券」を紹介する。

利回り投資の新しい形として注目したいのがデジタル証券だ。ここ1年で具体的な商品の発売が相次いでいる。デジタル証券とは、ブロックチェーン技術を使って発行される証券で、セキュリティートークン(ST)とも呼ばれる

既に株や投資信託も電子化されているが、あくまで紙の有価証券の電子化。紙の有価証券の売買単位が100株であれば、電子上でも100株単位の取引となる。だが、デジタル証券はこうした制約がないため、販売単位を自由に設定できるのが特徴だ。極端な話、100円分でも発行できる。この小口化が、これまで個人投資家が手を出しにくかったジャンルに風穴を開けた。その一つが社債STだ。

社債は100万円単位など大口の販売が多かったが、今年6月に丸井グループが発行した社債STは1口1万円と手軽。1年で1%(エポスカードのポイント含む)の金利が付くとあり、約20倍の倍率になるほど人気を博した。

不動産STにも注目

現在は社債よりも不動産を裏付けとする信託受益権を商品化した不動産STが多い。分配金が年2回ある商品が多く、利回り投資としてより期待できる。

「何十億円もする投資物件や、一般には出回らない物流施設にも、デジタル証券なら50万~100万円などの少額で投資できる。分配金は基本的に賃料が原資なので、利益を得る仕組みは現物の不動産投資と変わらない」。野村総合研究所の上級コンサルタント、周藤一浩さんはこう話す。

「少額で投資できる不動産投資にはREIT(不動産投資信託)もあるが、REITと違って上場しているわけではないので値動きは現物不動産と同じ。だが、ローンを組んだり借り手を集めたりといった手間はなく、両方のいいとこ取りをした商品と言えるだろう」と続ける。

商品にもよるが、予想配当は3~4%と好水準。5年程度で償還・売却される商品が多い。将来、物件価格が下がるリスクはあるが、上昇していれば持ち分に応じた利益も得られる。ただ、現在は投資家がいつでも売買できる流通市場が整っていないため、売却・購入希望時は証券会社に申し込む形になっている。

なお、信託受益権タイプのSTは不動産以外にも航空機や船、代替エネルギーなどが検討されている。今後の登場に期待したい。

ここがGOOD!
小口化された商品が多く、少額で投資しながら分配金を受け取れる。プロ向け物件など個人投資家が手を出しにくい分野にも投資可能
ここに注意!
まだ商品数が少ない。数年で償還され、長期保有はできず、売却は条件が付く