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浸水想定区域の建築規制緩和を 設計事務所経営 土居志朗

この地域は1967年(昭和42年)にも大規模水害に遭ったことがあり、洪水・土砂災害ハザードマップが整備されている。

これを見ると今回の浸水箇所は0.5~3メートルの浸水予想区域であることが分かる。さらに土砂災害や河川が氾濫したと思われる場所は、特別警戒区域や重要水防箇所と重なっていて、防災・減災には過去の経験やデータが有用なことを改めて認識させられる。

水防法で洪水浸水想定区域に指定されたほとんどの市町村がハザードマップを公表しており、建築設計を生業とする私は設計の際、参考にして1階の床レベルを設定している。しかし、現実には次のような問題がある。

建築基準法ではいくつかの高さ制限があり、敷地の地盤面や前面道路の高さを基準としているが、水害に備えて1階の床レベルを高くしようとするとその分建物が上がり、規制に引っ掛かってしまう。特に狭い敷地の場合、敷地境界線などから斜めに立ち上がる斜線制限による制約を受けやすく、1階床レベルを上げると天井を低くしたり、床面積を減らしたりせざるを得ないこともある。居住性だけでなく、賃貸物件などでは収益性も落ちて大問題になる。

そこで、洪水浸水想定区域における高さ制限を想定浸水高の分だけ緩和して高床対応を促してみてはどうだろうか。逆に3メートル以上の浸水想定区域においては地階や1階の寝室を許可しないような規制も必要かもしれない。

高さ制限は日照や景観といった都市問題から生じたもので、それと不動産的利益は相反するが、水害は命に関わる重大事である。経済を取るか命を取るかというコロナ禍に似たジレンマだが、共に生命の維持に必要である以上、両方を取らなければならない。

国土強靱(きょうじん)化を目指す今、ちょっとしたルールの緩和が大きな効果を生み出すだろう。ルール変更自体はコストがかからないし、できる建物から対応すればよい。自然は常に動いていてじっとしていないのだから、都市や制度も柔軟に変化に対応していかなくてはいけない。