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霊感商法「規制」も議論 消費者庁で開始、高額寄付焦点

消費者庁が有識者検討会の初会合を開き、同庁の過去の対応や被害救済策を検証。信者から宗教団体などへの「高額寄付」についても検討する。相談や注意喚起が主だったこれまでの取り組みを見直し、被害救済や未然防止で実効性ある対策を示せるかが焦点となる。

「フォローできていたのか検証と同時に、どう対応すればいいのか積極的に議論してほしい」。河野太郎消費者相は29日の初会合でこう述べた。岸田文雄首相から「スピード感をもって対応してほしい」と指示があったことも明らかにした。

検討会の委員は民法の専門家や弁護士ら8人。今後は週1回程度オンラインで開催し、報告書の取りまとめを急ぐ。検討会の設置は、安倍晋三元首相の銃撃事件を受けて改めて問題化した旧統一教会を巡る高額献金について、消費者庁として積極姿勢を示す思惑があったとみられる。対象は個別の宗教団体に絞らないが、旧統一教会を念頭に置く。

議論のテーマは大きく2つある。第1が霊感商法だ。これまでの対策の検証と今後の被害抑止策が中心となる。

霊感商法は1980年代に旧統一教会による被害が社会問題化。2018年改正の消費者契約法は同商法を「霊感などの合理的な実証が困難な特別な能力を知見として、そのままでは重大な不利益が生じるなどと不安をあおり、契約の締結を迫ること」などと定義した。

例えば、消費者庁は「私は霊が見える。あなたには悪霊がついておりそのままでは病状が悪化する。この数珠を買えば悪霊が去る」などと告げて不安をあおり、高額な商品を売りつけるケースを例に挙げる。法改正で霊感商法による契約は締結から最長5年間取り消せるようになったが、被害は後を絶たない。

全国霊感商法対策弁護士連絡会によると、旧統一教会による霊感商法被害は1987~2021年に3万件超、計約1237億円に上る。法改正後の19~21年も23億円の被害があった。消費者庁によると、全国の消費生活センターなどに寄せられた相談件数は21年度に約1400件。近年、横ばいが続く。

背景には相談窓口に霊感商法に特化した知識を持つ人材が不足していた側面がある。同庁は専門資格を持つ相談員など約3300人を相談窓口に配置するが、契約取り消しやクーリングオフの案内にとどまっていた。

第2が高額寄付への対応だ。旧統一教会を巡り警察当局が摘発に大きく動いたのは09年。教団と関係が深いとされる印鑑販売業者らを特定商取引法違反容疑などで相次ぎ立件した。

商品の販売時に虚偽の説明などをしたと認定された場合、特商法の「不実の告知」に抵触する場合がある。一方で、寄付について、河野氏は檀家の寄付などを踏まえ「寄付にも色々ある。(不法行為との)線引きが難しい」と話した。どのような場合に寄付が問題になるのか、線引きが検討会の焦点のひとつだ。

消費者契約法は寄付や献金が本人の意思で行われていれば、個人の意思表示のみで成立する「単独行為」に当たる可能性があるとする。その場合は同法が適用されず、契約取り消しによる救済を受けられないことがある。本人の意思か否かが同法の適用のポイントになる。

省庁間の連携も課題だ。従来は被害相談が省庁間でたらい回しされるケースもあった。政府は18日、旧統一教会問題を巡る関係省庁連絡会議を発足。9月に一元的に相談に応じる体制を設ける。被害者支援に長年取り組む紀藤正樹弁護士は初会合で「消費者庁だけでできないことがあれば省庁の枠組みを超え、例えば特命担当大臣を置いて解決してほしい」と求めた。消費者庁は連絡会議にも参加しており、一体的で効果的な連携を取れるかがカギとなる。

旧統一教会は摘発を受けた09年に「コンプライアンス宣言」を公表。田中富広会長は8月の記者会見で「霊感商法なるものを過去においても現在も当法人が行ったことはない」と説明し「社会的、法的に問題がある行動をしないよう指導を徹底している」と述べた。

被害者救済で参考になるのがフランスの取り組みだ。カルト対策として05年に積極的な情報提供や被害者救済などの方針を示した。国の機関が一元的に扱う被害者の通報は20年に3千件超。同国の制度に詳しい山形大の中島宏教授は「違法行為に着目して対処する方針は参考になる。消費者庁や公安調査庁など横の連携を強めるべきだ」と指摘する。

霊感商法が社会問題化して約40年。一刻も早く実態を把握し、救済や被害の未然防止に向けた実効的な仕組みづくりが急務だ。