子ども3人以上の多子世帯や理系学生を対象とする。予算膨張を防ぐため対象の大学や学生が適正かの検証は必要になる。
政府の教育未来創造会議(議長・岸田文雄首相)が近く公表する修学支援の工程表案に「24年度から開始」と盛り込んだ。
具体的な年収水準や条件は年内に文部科学省の有識者会議で検討する。23年に財務省などと調整して必要予算の確保をめざす。
大学や短大などを対象とする奨学金は返済が必要な「貸与型」が多い。卒業後に返済に苦しむケースがあり、不安なく利用できる「給付型」を拡充する。

給付型は年間最大91万円までで、年収によって支給水準が変わる仕組み。両親と子2人の世帯の場合は年収380万円未満が対象の目安となる。22年度予算は2525億円を計上している。
政府内には年収600万円前後までを対象とする案がある。実験や実習などで授業料が高くなりやすい理工系・農学系と教育費負担が重い多子世帯に絞る。デジタルや脱炭素といった成長分野の学生を増やす狙いもある。
給付型の対象拡大は教育未来創造会議が5月にまとめた第1次提言が柱の一つとして書き込んだ。首相が掲げる「人への投資」の一環として早期実現を探る。
新型コロナウイルス禍による経済環境の悪化やウクライナ侵攻による物価高が家計を圧迫する状況を踏まえ、可能な限りもっとも早い24年度を目標とした。
給付型の対象拡大は政府の財政負担と引き換えに大学が入学者を確保しやすくなる面がある。現在も教育体制や経営基盤が一定の水準を満たす大学に限定し、学生の意欲や進学後の学修状況などの条件をつけている。
21年度は予算枠を使い切れなかった。限られた財源を日本の成長につなげる「賢い支出」のためには制度を拡充するにあたって支給要件が適切かの議論は欠かせない。
筑波大の金子元久特命教授は「家計が苦しい優秀な学生層には大きな後押しとなるが、給付型奨学金の成果についての調査・分析は現状では不十分だ。費用対効果を上げるには支援対象を優れた教育環境を整える大学に絞るなど基準の厳格化が欠かせない」と指摘した。

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