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台湾のAIスタートアップ、中国より日本めざす事情 ASIA TECH

ウェブサイト利用者の嗜好などをAIで分析し、化粧品やアパレルのマーケティングを効率化するサービスを手がける。日本を有力市場と位置づける一方、なぜかネット通販が盛んな人口大国・中国での事業に消極的だという共通点がある。

ネット市場小さく、海外へ

「ネットビジネスに必要な5000万人以上の人口を確保できるうえ、消費者の購買力も高い」。iKala(アイカラ)創業者の程世嘉・最高経営責任者(CEO)は2021年9月に日本法人を設立し、進出した理由をこう語る。

米国留学を経て米グーグルで技術者として働いていた程氏は11年、台湾・台北でiKalaを設立。ネット版のカラオケとして創業したが、現在はインフルエンサーのAI分析を通じたデータマーケティングの支援に事業転換している。

15万人以上のインフルエンサーの関心分野や投稿頻度などのデータをAIで把握し、ネットマーケティングを展開したい消費財メーカーを仲介して収益を得ている。21年には、台湾当局から地元の有力スタートアップ9社の1社に選ばれた実績もある。

ただ、人口が2300万人強の台湾はネット市場としては小さい。iKalaは15年、華人が多い東南アジアから海外進出を始め、現在は日本を含む6カ国・地域で事業を展開する。しかし、中国は代理店を置くだけにとどめている。

二重の開発コスト

「中国ではネット産業の『保護主義』に伴うコスト負担が大きい」(程氏)。台湾のインフルエンサーは主にフェイスブックなど米国発のSNS(交流サイト)で活動している。AIスタートアップはグーグルなど米国発のクラウド上でSNS分析技術を開発する。

一方、中国では政府が米国発SNSの接続を遮断し、微信(ウィーチャット)など独自のSNSが定着している。クラウド環境も中国特有なので、本格進出すると開発コストが二重にかかってしまう。合理的に経営判断すると、日本へと自然に目が向くのだという。

同様の事例にエイピア・グループがある。台北で12年に設立された同社もAIによる顧客分析が主力だが、SNSやクラウドが似た日本・韓国の売上高比率が6割を超す。21年3月には東証マザーズ(当時)で新規株式公開(IPO)しており、日本重視が鮮明だ。

中国の「ネット鎖国」の狙いは海外情報の制限であり、台湾企業の排除ではない。しかし結果として、AI分野で日本と台湾の産業連携を後押しする皮肉な政策効果を生んでいる。

(アジアテック担当部長 山田周平)