早ければ9月下旬から新たな基準を適用し、対象を65歳以上の高齢者や妊婦など重症化の恐れが高い場合に限定する。給付金を受け取れる対象者はこれまでより7割前後減る見通しだ。
生命保険協会と日本損害保険協会が近く新たな基準を固め、加盟社への通知を始める。実際に適用するかは各社の判断となる。日本生命や第一生命、住友生命保険は9月下旬にも導入する方向で、大半の生命保険会社が追随するとみられる。ただ、給付金を受け取れる対象者が減るため、契約者から不利益変更と受け取られる可能性もある。
新基準で給付金の支払い対象となるのは、新型コロナウイルスに感染した人のうち①65歳以上②入院を要する人③新型コロナの治療薬を投与する必要がある人④妊婦――のいずれかの条件を満たす人に限られる。厚生労働省が重症化の恐れが高いとし、新たに保健所への報告を求めることにした要件と足並みをそろえる。
現行制度では、こうした条件に関係なく、軽症や無症状でも医療保険の入院給付金を受け取ることができる。感染者の急増で医療機関が逼迫する事態を防ぐため、自宅や自治体が指定するホテルで療養している人を実際の入院と同等に扱う「みなし入院」と呼ぶ措置を講じているためだ。

生保協によると、加盟42社が支払った入院給付金は6月末までの累計で2893億円。このうちみなし入院は92%弱にあたる2650億円にのぼる。今後はいずれかの要件に当てはまらなければ給付金の支払いを受けられなくなる。対象者はこれまでより7割前後減るという。
生命保険会社が対象者を見直すのは、軽症や無症状の感染者への支給が急増しているためだ。給付金の受け取りを目的に、感染の疑いが出てから保険加入を申し込む事例もあるという。支払業務にあたる人員のやり繰りなど業務面の負担も重くなっている。
負担が増しているのは保健所でも同じだ。みなし入院の感染者が給付金を受けるには保健所の療養証明書が必要だ。保健所の業務が逼迫する一因となっていた。生保各社は療養証明書を求めず、代わりに母子手帳など、要件を満たしているかどうかを確認できる資料の提出を求める。
病気やけがによる入院に備える団体向けの傷害保険を取り扱う損害保険会社も、陽性と判定されたら給付金を支払う措置を続けている。今後は生保と同様の基準を適用する見通しだ。

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