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金融教育を国家戦略に 資産所得倍増で金融庁提言へ 金融庁の22年度行政方針判明

民間金融機関などが進めてきた金融教育について、「国全体として体制を検討する」と明記し、国家戦略として推進するよう提言する。社会人層を含め全世代を対象にした新たな制度を議論する。金融商品の販売勧誘ルールも再点検し、金融リテラシー向上を促す環境も整える。

資産所得倍増プランを議論する官邸に設置した「新しい資本主義実現会議」に提言する。今回の金融行政方針は岸田文雄首相が就任後打ち出した「新しい資本主義」に沿って出す初めての方針。「成長が国民に還元される金融システムを構築する」と打ち出し、金融庁の政策も国民還元型の目線で再構成する。

金融庁は若者の投資環境を促すため少額投資非課税制度(NISA)の恒久化を要望しているが、「金融リテラシーの向上」も国民の資産形成に欠かせないと判断した。

金融教育は学習指導要領を改訂し中学・高校の授業に盛り込まれたが、大学生以上、とりわけ投資を実践する社会人向けは民間金融機関が主体的に取り組んでいるのが実態だ。官民が連携して推進する新たな体制をつくり、全世代を通じて金融教育を提供する制度を議論したい考え。

民間主体ではどの商品に投資すればよいのか、それを促すための助言も営業トークのように受け取られる限界がある。金融審議会(首相の諮問機関)でも議論を始め、「中立的立場」で金融教育を推進する体制も検討する。

損保総研によると、米国は2000年代初頭、各省庁が横断的に参画する「金融リテラシー教育委員会」(FLEC)を設置。米リーマン・ショックをきっかけに「金融能力に関する大統領諮問委員会」(PACFC)もつくり、国家戦略として金融教育に力を入れてきた。学校教育だけでなく、対象を職域まで広げ、退職金の運用など資産形成を促してきた。

日本は金融広報中央委員会(日銀が事務局)を中心に活動している。政府の関与を強め、国家戦略として金融教育を提供する機会を増やす必要があると考えている。

一方、金融機関側の販売勧誘を巡る環境整備にも乗り出す。金融商品取引法は金融機関に対し、顧客の知識、経験、財産の状況、金融商品取引契約の目的に照らして不適当な販売を禁じている。「適合性の原則」と呼ばれるルールで、顧客の金融リテラシーに応じた金融商品の販売が前提だ。2017年からは顧客ニーズに沿った販売姿勢を促すため、「顧客本位の業務運営に関する原則」と呼ばれるプリンシプルを策定。2000を超える業者が採択している。

ただ、それでも顧客から苦情が相次ぐ金融商品は後を絶たない。不適切な販売が広がっていることを踏まえ、販売勧誘環境を巡るルールとプリンシプルの両面で見直しが必要と判断した。

資産運用会社が顧客の声に沿った商品を開発するよう商品開発段階のガバナンスを強化する。原則を改定し、金融機関がミスマッチな高リスク商品を販売しにくい環境を整える。

顧客にふさわしい商品を販売するルールについても、コンサルティングやアドバイスを通じて健全なビジネスに見直す。「顧客本位の原則」や「金融教育提供」をどこまで法律上、金融機関に求めるかが焦点になりそうだ。