家に毎日のようにやってくる宅配便のドライバーに、無類の犬好きの人がいる。町内すべての犬の種類と名前をインプット。近所の犬の近況を聞くと「元気ですよ。散歩の時間を変えたみたい」とか、教えてくれる。
このドライバーにだけは、玄関に入っても吠(ほ)えない犬が多く、すっかり町内の人心……ならぬ、犬心を掌握して、町の人気者に。自分もこのドライバーが来ると犬が喜ぶので、自分宛ての荷物は、ここの会社の宅配を利用できる店などを選ぶようになっている。
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で、宅配便でいうと、ドライバーがうちに荷物を運ぶ部分が、今週の令和なコトバ「ラスト・ワン・マイル」だ。直訳すると〝最後の1マイル〟(約1.6キロメートル)だが、この距離はたとえ。あるサービスがエンドユーザーに届くまでの、最後の区間がこう呼ばれる。
最初に使われたのは、通信業界。基地局から各家庭への最後の配線の長さが、平均1マイルだったことから、こう呼ばれるようになったとの説がある。特に、新しいサービスが始まるときには、このエンドユーザーとの接点がその成否を左右することも知られるようになった。
一方で最近よく聞くのは、運輸業界でのラスト・ワン・マイルだ。自分は気が短いため、原稿チェックよりこまめに、ネットショップの配送状況をチェックするタイプ。これを例にすると、家の近くの宅配便の支店に届いた荷物をドライバーが運び、家の玄関のピンポンを押すまでが「最後の1マイル」となる。
この区間は他より多くコストがかかるほか、商品を素早く運ぶスピード競争も起こっていたりして、物流の過程で最も課題が多いといわれている。最近は、ドローンを使った配送や、ウーバー方式で時間のある一般人が担う配送など、新しい試みもさまざまに行われている。
倉庫や物流センターなどが入る物流施設も進化している。例えば物流不動産開発の日本GLP(東京・港)が手がける「アルファリンク」という物流施設のシリーズだ。食堂やカフェ、フットサル場など、そこで働く人でなくても、利用できる施設があるのが特徴。「地域と共生することで、ラスト・ワン・マイルに価値を与える」(広報担当者)というコンセプトの新しい物流施設になっている。
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そこで千葉県流山市の「アルファリンク流山」という日本最大級の施設でランチを食べてきた。来客用の駐車場に車を止めて見回すと、一般客の車で満車寸前。「人の会社の社食はうまい!」というのは社食あるあるだが、ここのランチも安くてなかなか。そのへんの店よりゆったりしていて、近所からきた風の老夫婦やら、夏休みの家族連れやらが集まる、けっこうな人気スポットになっていた。
「物流拠点というと暗くて暑いというイメージを持つ人も多い。実は明るいこんな場所ということをお客様に知ってもらい、物流のイメージアップと人手不足解消につなげたいですね」(同)
数年後には関西で、店舗でショッピングもできる物流拠点もオープン予定とか。行きます。
(福光 恵)

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