中古住宅購入、思わぬ負担も 修繕費・手数料、膨らみやすく

新築に比べ購入価格を抑えられるほか、戸建て住宅の場合は新築の販売がほとんどなく、中古が主な選択肢という地域もあるためだ。もっとも中古も物件価格は上昇傾向で、リフォームなど新築にはない費用がかかることもある。資金計画には注意が必要だ。

 

不動産流通推進センターによると、売り主と不動産業者が一定の媒介契約を結んで販売する中古住宅などの成約件数は2021年度に約18万6000件と、過去10年で37%増えた。LIFULLで住宅購入の相談を受ける高瀬一輝氏は「最初は新築を考えていたが、最終的に中古を選ぶ人が少なくない」と話す。

一因が住宅価格の上昇だ。戸建てとマンション、住宅地を総合した国土交通省の不動産価格指数は過去10年で3割上がった。駅の近くなどすでに開発が進んだ地域では新築は価格が高く、物件も限られやすい。新築より中古のほうが物件を探しやすいこともある。

戸建ての中古住宅の価格は千差万別で、物件の状態や立地などで大きく変わる。通常、物件そのものは近隣の新築より安くなるが、新築では発生しない費用がかかったり、手数料などが膨らんだりすることもある。それらを踏まえて資金計画を考える必要がある。

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費用は様々な場面で発生する。例えば売買の約束時点で手付金を払うことが多い。中古住宅の売買仲介サイトを運営するツクルバによると「物件代金の5%程度が一般的」で、物件が3000万円なら150万円ほど。手付金は物件を確保する意味があり、買い手側の事情で一方的に契約を解除した場合は返却されないことがある。

契約時に不動産仲介業者に払う手数料は中古で多い費用の一つだ。物件価格の3%に6万円を加えた金額が上限となることが多く、その金額に消費税が加わる。3000万円の物件なら100万円程度になる。

中古物件では新築よりも登記の際の登録免許税が多くかかる。中古住宅の建物の税率は原則、新築の2倍の0.3%で、住宅ローンを組むとさらに上がる仕組みだ。税理士の荻窪輝明氏は「土地の分と合わせておおむね数十万円を物件の引き渡し時に払うことが多い」と言う。

物件以外の費用で最大なのがリフォームだろう。不動産コンサルティングのさくら事務所(東京・渋谷)の田村啓氏は「手入れの状況にもよるが、築年数が約10年を超える住宅は大抵、購入時に何らかのリフォームが必要になる」と話す。ちょっとした手直しですむ場合もあれば、ほぼ建て替えに近い修繕が必要な建物もある。

どの程度のリフォームが必要かを知る手段の一つがインスペクション(建物状況調査)だ。住宅診断の専門家が建物や設備の劣化状況や欠陥などを調べ、修繕に必要となる費用を見積もる。一般的には購入を決め、手付金を払った後、契約をする前の段階で実施する。さくら事務所の場合、戸建て住宅にかかる費用は最低6万円で、床下の基礎部分や屋根裏などを調べると10万円以上かかる。

劣化や欠陥のすべてを入居までにリフォームする必要はない。ただ、雨漏りしている部分の修繕や換気扇、キッチンなどの水回りといった住宅の構造や機能に関わる部分は優先度が高い。LIFULLの高瀬氏は「水回りの設備交換と壁紙と床の張り替えで500万円程度がリフォーム費用の目安になる」と話す。

入居時に問題はなくても、その後数年で修繕が必要になる設備もある。ファイナンシャルプランナーの久谷真理子氏は「あらかじめ購入後のリフォームも考えて手元資金は余裕を持って準備することが大切」と話す。戸建て住宅の場合、リフォームの時期や費用は自分で計画しなければならない。

水回りなどで大きなトラブルがあると、修理が済むまで住み続けられないこともある。計画的に資金を準備し、手入れをするのが望ましい。少なくとも入居してから10年程度の間に、修繕が必要となる水回りなどの設備や外壁の塗装、ベランダの防水といった工事の時期や費用を調べておきたい。

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こうした費用をどのように用意するか。まず、手付金など契約までの費用はあらかじめ確保しておくのが基本だ。そのうえで物件の代金やリフォームの費用は必要に応じてローンを組むことになる。住宅の購入費用は住宅ローン、リフォーム費用はリフォームローンがそれぞれ対応する。

リフォーム費用を合わせた金額を借りられる金融機関も多い。リフォームローンの金利は一般に住宅ローンより高く、リフォーム費用を含めて住宅ローンを借りたほうが金利負担を抑えやすい。リフォーム費用を含めたローンを組む場合は「借り入れの契約時に工事の設計図と見積書が必要になる」(LIFULLの高瀬氏)。

住宅ローンを組むと住宅ローン減税を利用できることが多い。「2022年の入居からは1982年以降に建築した住宅は耐震基準を満たすとみなし、制度を使いやすくなった」(税理士の高木英樹氏)。25年までに入居すれば年末借入残高の0.7%を10年間、税額控除できる。年末残高の上限は省エネ基準を満たすなどした住宅は3000万円、それ以外の住宅は2000万円だ。宅地建物取引業者が売り主となり一定のリフォーム工事を済ませた住宅は「買い取り再販」として新築住宅の条件で住宅ローン減税を利用できる。