お台場の大観覧車、最後の夏 別れを惜しむ人々

営業終了日までは大観覧車が立つ複合施設「パレットタウン」をイメージした特別なイルミネーションが夜空を彩る。家族連れらは思い出が詰まったゴンドラで最後のひとときを過ごしている。

 

東京都板橋区から家族4人で訪れた小林勇一さん・由紀子さん一家にとって観覧車は夫婦2人の初デートの場所であり、婚姻届を提出した日にも乗ったという、まさに思い出の場所。それからほぼ毎年、結婚記念日の前後に訪れているという。8歳と3歳になった子どもたちとともに最後の乗車を終えた勇一さんは「お台場の街が変わり、自分たちにも家族が増えた。感慨深い」と話した。

運営するサノヤス・ライド(大阪市住之江区)によると、最終日に関する問い合わせは増えているが、安全を考慮してセレモニーやイベントの予定はない。営業時間は午前11時~午後10時までだが、最終日は午後7時に受け付けを終了する。当日は多くの乗客を見込んでいるという。

パレットタウンが開業したのは1999年3月。トヨタ自動車の大型ショールーム「メガウェブ」やライブハウス「Zepp Tokyo」、商業施設「ヴィーナスフォート」などと共に、多くの人が楽しめるランドマークになってほしいと大観覧車が建設された。

高さは115メートルと、当時世界一高い観覧車としてギネス世界記録に認定。23年間で約2100万人が乗車した。

2021年、臨海部の再開発に伴いパレットタウンの営業終了が決定。すでにメガウェブなどは閉館し、最後に残った大観覧車とデジタルアートミュージアム「チームラボボーダレス」は31日で営業を取りやめる。

事業区域の進出事業者である森ビルとトヨタ自動車は、新たなにぎわいを創出する施設を検討しているという。現時点ではトヨタグループのトヨタ不動産が敷地の一部に多目的アリーナを建設することだけは決まっていて、25年6月の竣工を予定している。

(鈴木雄太、福井啓友、西嶋竜二)