戸建てでもマンションでも、築年数が古くなると、雨漏り対策など基礎的な工事だけでも費用がかさんでくる。長寿化で必要な工事回数が増える一方、工事単価は上昇傾向だ。「終(つい)の棲家(すみか)」を確保・維持するお金にも目配りが必要になる。
「こんなに費用がかかるのかと驚いた」。東京都で十数年前に新築一戸建てを構えた会社員は、家の外壁塗り替えに100万円以上がかかったことを振り返る。戸建ての場合、この男性の家のように、外壁や屋根の塗装・補修などがおよそ15年程度で発生し、費用は数十万円から100万円程度かかる例も多い。
トータルの費用はどれくらいになるのか。不動産コンサルティングのさくら事務所(東京・渋谷)の試算だと、標準的な戸建て住宅(木造2階建て、延べ床面積116平方メートル)では築後30年の修繕費用は基本的な項目だけで900万円を超す。シロアリ対策、給排水管や給湯器の交換など様々な工事が積み上がると、負担は徐々に重くなる。
30年超の時期はどうか。さくら事務所の田村啓ホームインスペクターは「期間を延ばすと流動的要素が多くなるが、仮に60年の総費用を考えると、2500万円程度になり得る」と話す。60年間、建て替えずに修繕を続けた場合の試算で、建て替えた場合の総費用はさらに膨らむ可能性が高い。実際の費用は個人差が大きいものの、「長寿化で生涯を通じて必要な工事回数も増えている」(田村氏)。

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