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海外留学にも円安・物価高が影 滞在費用増え延期も

滞在費用の増加が見込まれ、留学を延期したり渡航先を変更したりするケースがでてきた。新型コロナウイルスの影響で減少した留学生の回復が期待されるなか、専門家は送り出す大学側の支援の重要性を指摘する。

「想定外の支出になってしまった」。今秋から米ニューヨーク市にある大学院に留学する予定だった東京都内の会社員女性(24)は8月と決めていた渡航を延期し、年末まで待つことにした。

原因は急速な円安・ドル高だ。受験したのは2021年12月。当時は1ドル=110円台だったが、8月は130円台まで円安が進んだ。生活費・学費を含めて2年間で計3000万円ほど必要となり、当初の想定から2~3割膨らんだ。

「留学先に奨学金を増やせないか交渉したがだめだった。今は本当に留学できるのか不安しかない」。円高に振れることを期待しつつ、働いてお金をためるという。

物価高も追い打ちをかける。米国では7月の消費者物価指数が前年同月比で8.5%上昇。1981年11月以来の上昇率となった6月の水準よりは低いが、5カ月連続で8%を超えた。

6月まで半年間、米国に留学していた大学4年の男子学生(23)によると、帰国間近の5月の生活費は1月に比べて5万円ほど増えていた。「外でハンバーガーを食べると最低でも13ドルかかる。大学の食堂で安くすませて何とか生活費を抑えていた」と振り返る。

原油高の影響で、航空会社が飛行機代に上乗せする燃油特別付加運賃(燃油サーチャージ)も上がった。約80人が交換留学で渡航予定の立命館大学の担当者は「燃油サーチャージが高騰し航空券代が高いとの悩みが多く寄せられている」と話す。

留学支援会社の留学ジャーナル(東京・新宿)によると、社会人はいったん留学を延期する人が目立つ一方、大学生は「機会を逃したくないと予算内で行く方法を考える人が多い」(加藤ゆかり副社長)。同社は地域や場所の変更を促すなどして実現を後押ししているという。

千葉市の広瀬翔哉さん(22)もその一人だ。国際支援の関連企業への就職に必要な英語力を磨くため英国に渡ることを希望していたが、行き先を費用が比較的少なくすむオーストラリアに変更した。「チャンスは今しかない」と9月から現地へ赴く。

大学も対応に追われている。都内の大学に通う女子学生(20)は交換留学生として1年間、米国で学ぶ予定だったが、留学期間を半年に短縮した。円安により授業料や寮費などの負担が重くなることを踏まえ、5月に大学側に相談した。

大学同士が提携する交換留学では原則、留学期間の短縮は認められない。ただこの大学の担当者は「候補者を募集した2021年秋に急激な円安を予測するのは難しく、十分な資金をためられなかったことは仕方ない」と判断し、特例で認めた。

留学事情に詳しい関西国際大学の芦沢真五副学長(国際担当)は「コロナ禍を契機に、オンラインと対面を組み合わせた多様な留学を、低リスクかつ低コストで実現できるようになった。大学は学生のニーズに合わせた色々なプログラムを提供すべきだ」と話している。(亀田知明、田辺アリンソヴグラン)

コロナ下で海外留学98%減、回復へ官民共同で支援

新型コロナウイルス下では、感染拡大に伴う渡航制限で日本人学生が海外に留学する機会はほとんどなくなった。文部科学省によると、日本から海外に留学した学生は2018年度に約11万5千人に達したが、20年度は前年度比98%減の1487人に落ち込んだ。
文科省は27年度までに留学生数をコロナ前の水準に戻す方針だ。官民共同の留学支援事業「トビタテ!留学JAPAN」の第2期を23年度から開始。奨学金などの財源として5年間で企業から100億円の寄付を集め、計5千人を海外に送り出す目標を掲げる。
各国は21年ごろから順次、入国制限を緩和し、日本も今年6月から本格的に観光客を受け入れている。日本政府観光局によると、7月に出国した日本人数は推計値で約27万人で、6月から10万人以上増加。前年同月比では6.4倍となった。