(社説)スシロー問題を他山の石に

運営会社のFOOD&LIFE COMPANIES(F&LC)の業績悪化にもつながってしまった。

業界最大手のスシローの不正行為は外食産業だけでなく、消費全体にも影響を及ぼす。スシローは徹底した対策による不信感の払拭が急務だ。同業他社や小売りも他山の石としなければならない。

おとり広告は2021年9~12月の期間限定で人気のウニとカニを使ったキャンペーンだった。しかし宣伝期間中、店舗の9割超で提供されない時期があった。このため消費者庁が景品表示法違反(おとり広告)と認定し、再発防止を求める措置命令を出した。

措置命令を受けてからわずか1カ月後、「生ビール半額」のキャンペーンの告知物を実際の開始前に掲示。告知を見て購入した顧客への返金を余儀なくされた。

背景にあるのは、コンプライアンス意識の欠如や組織内の風通しの悪さだろう。F&LCは再発防止策の徹底を約束し、水留浩一社長らは報酬を一部返上する。

もっとも全国チェーンのスシローだけに、水留社長が記者会見を開き、顧客や株式市場に対して直接、説明責任を果たすべきだった。企業ブランドのイメージ回復の上でもそれが効果的だが、現時点で会見を開く予定はないという。

外食や小売業では原料高や輸送費の上昇を受けた値上げが相次いでいる。大幅な家計所得の増加は期待できず、今秋にかけて消費が低迷する可能性も高い。

だからといって、消費者をあおるような過大な宣伝広告や販促はもちろん禁じ手だ。実際にスシローは不祥事により足元で客足が落ちた。F&LCの22年9月期の連結業績にも影響しそうだ。

意図的でないとしても、不正が発覚すればブランド価値は低下する。企業は顧客の不信を招かないように手綱を締める必要がある。