原発の新増設を想定しない東日本大震災以降の方針を転換し、年末までに具体策をまとめる。再稼働する原発は2023年夏以降に最大17基へ増やし、中長期的な電力確保をめざす。
首相は官邸で開いたGX(グリーントランスフォーメーション)実行会議にオンライン出席し、原発政策を説明した。「新たな安全メカニズムを組み込んだ次世代革新炉の開発・建設」を検討するよう関係省庁に求めた。
ロシアのウクライナ侵攻で世界のエネルギー市場が混乱していることを踏まえ、原子力の活用が急務だと判断した。「電力需給逼迫という危機克服のためあらゆる施策を総動員する」と訴えた。
次世代型原発(総合2面きょうのことば)として政府が検討するのは既存原発よりも安全性を高めた「革新軽水炉」。政府内には関西電力美浜原発3号機(福井県)などを建て替える想定がある。
首相は震災後に再稼働したことがある10基に加え原子力規制委員会の安全審査を通過済みの7基を追加で動かす方針だ。東京電力柏崎刈羽原発6~7号機、日本原子力発電の東海第2原発、東北電力女川原発2号機、関西電力高浜原発1~2号機、中国電力島根原発2号機を念頭に置く。
国内に原発は33基ある。福島県での原発事故後に電力会社が再稼働を申請したのは25基で、17基が安全審査を通過した。このうち首相が言及した7基は地元自治体の同意を得ていないなどの理由で再稼働していない。
首相は「再稼働に向け国が前面に立ってあらゆる対応を取っていく」と訴えた。国が自治体への説明や事業者への安全対策の徹底などに動き、再稼働に向けた環境整備に取り組む見通しだ。
原子力規制委員会の更田豊志委員長は24日の記者会見で「政府も規制の要求を曲げろと言っているわけではない。要求レベルや規制の役割を変えずにやる」と述べた。次世代型原発の安全基準づくりには年単位の時間がかかると指摘した。
首相は安全確保を前提としつつ「運転期間の延長など既設原発の最大限活用」を進める方針も示した。いまは原子炉等規制法で稼働を原則40年、最長60年と定め、期間が過ぎれば廃炉になる。
政府内では安全審査の時間を期間から除外して計算するなどして実質的に延ばす案が浮上する。

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