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水をめぐる豊後の旅 近代に花開いた石造文化 アプローチ九州

車はその美しいアーチをくぐり抜けた。大分県竹田市門田。6連の巨大なアーチ橋は川と水田、そして県道8号を跨(また)いで屹立(きつりつ)する。

 

橋の名は「明正井路一号幹線一号橋」。明正井路は明治〜大正期に計画、建造されたことを示し、井路は文字どおり用水路である。つまりこの石橋は水路橋で、橋の上には滔々(とうとう)と水が流れているのだ。

竣工は大正8年(1919年)。全長89.2メートル、全幅2.8メートルの全国最大級の水路橋である。明正井路は幹線だけでも48キロメートルに及び、石造アーチ橋は17基も建造された。

ところで日本の産業やインフラは、幕末から明治初期にかけて欧米からの技術導入によって大きな転換期を迎えた。鉄鋼やセメントの輸入、国産化で建築物も橋も変貌する。

しかし、豊後の地では大正、そして昭和を迎えても石造の橋や堰堤(えんてい)が造られた。江戸時代とは異なり、規格化した石材を効率よく整然と平積みする技術。目地をコンクリートモルタルで固める手法が今も頼もしい風景を見せてくれている。

竹田市周辺では他にも「若宮井路笹無田石拱橋」などの水路橋や、美しさで人気のある白水堰堤という灌漑(かんがい)用のダムなど見どころが多い。さらに県内には大正期建造の日本最長の8連石造アーチ橋、耶馬溪橋や宇佐市院内の鳥居橋、荒瀬橋など美しい石造橋もあって夏のドライブにはおすすめだ。

中、近世に花開いた豊後の石仏文化も素晴らしいが、近代化を遂げた石造物の文化もぜひ楽しんでいただきたい。(砂田 光紀)

=8月18日付日本経済新聞朝刊九州文化面掲載