米国株式インデックス投資信託の流入額は7月まで9カ月連続で1000億円を上回った。円換算ではパフォーマンスが安定しており、「円建てS&P500種株価指数」は過去最高値を更新した。景気減速懸念が強まるが、株安リスクは気にしない。過去にリーマン・ショックなど危機を乗り越えて上昇を続けた米国株の成長力への信頼は高いようだ。
「長期で米国株は伸び続けているから、細かく価格は見ない」。30代女性の個人投資家は、長期投資用の口座で米国株の積み立てを続ける。米国内総生産(GDP)の2四半期連続のマイナス成長や原油安など、足元で点灯する景気減速のサインを意に介さない。
個人マネーは米国株へ向かい続けている。モーニングスター・ダイレクトによると、為替ヘッジをしていない米国株式インデックス投信(ETF、SMA専用ファンドは除く)の純流入額は7月まで9カ月連続で1000億円を超えた。2021年末のピークから減ったが高水準を維持する。18年~21年の平均は月約379億円だった。
QUICK資産運用研究所によると、代表的な投信である「eMAXIS Slim 米国株式S&P500」は、7月の資金流入が約450億円と全投信の中でトップだった。「中長期の個人投資家が買い増している」(国内運用)
根強い米国株買いの背景にリーマン・ショックや新型コロナウイルス禍など危機を乗り越えて成長を続ける米経済と企業の強さがある。S&P500は2000年末比で3.2倍となったのに対し、日経平均株価は2.1倍にとどまる。
足元の円安・ドル高も追い風だ。QUICK・ファクトセットによると、S&P500種株価指数を円換算した値は18日に58万台と過去最高値だった。年初来で6%、17年末比では約9割の上昇だ。円換算した米株指数に連動する各投信の基準価額も軒並み設定来の最高値を更新しており、「保有者は全員が含み益」という状態だ。

一方で日本株への関心は低い。19日の日経平均は積極的な上値追いの勢いには乏しかった。売り越し基調は中長期投資家も同様で、日経平均連動型の上場投資信託(ETF)を保有していた個人投資家は「2万9000円に乗せたところで売った」と話す。
ニッセイ基礎研究所の前山裕亮氏はインフレと景気動向を軸に、4つのシナリオで円建て米国株の先行きを分析する。現在は「インフレ収束・景気堅調」に近い状況とみており、投資に理想的な環境だ。ただ「インフレ収束・景気後退」に転じた場合、円建て米国株の損失はドル建て以上に大きくなる可能性がある。
ある個人投資家は「超長期のチャートでみれば2割の下落も許容範囲内」と楽観視する。前山氏は「最近、円建ての米株に投資してきた人は大きな下落の経験がない。景気後退局面に備えてリスクが偏っていないか点検する必要がある」と警鐘を鳴らす。
(小池颯)

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