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米著名投資家、金融・石油株買い バフェット氏のバークシャーなど、利下げ観測で強気に

背景には来年にも米連邦準備理事会(FRB)が利下げに転じるとの観測から景気悪化懸念が後退したことがある。年初から売られていたIT(情報技術)株に押し目買いを入れる動きも目立つ。ただ、一部の投資家は相場の波乱を予想し株式をほぼ全て売却するなど守りの姿勢を固めている。

 

米国で1億ドル(約130億円)以上を投資する投資家は四半期ごとに保有株などを米証券取引委員会(SEC)に報告する必要がある。対象は主に米国市場の上場銘柄で、空売り(ショート)などは含まれない。報告書は「フォーム13F」と呼ばれ、プロの投資家の投資行動が垣間見える資料として市場で注目されている。

 

 

ウォーレン・バフェット氏率いるバークシャー・ハザウェイは6月末時点で3月末に比べ、石油・ガス大手のオキシデンタル・ペトロリアム株を16%、シェブロン株を1%買い増しした。情報サイトのホエール・ウィズダムによると、バークシャーのポートフォリオに占めるエネルギー株の割合は、比較できる2002年以降で初めて1割を超えた。バークシャーはオキシデンタル・ペトロリアム株を7月以降も買い進め、発行済み株式数の約2割を握ることを別の報告書で明らかにしている。

バークシャーは金融株にも積極投資している。自動車や住宅向けローンを手がけるアライ・ファイナンシャル株の保有を3倍超にし、保険大手マーケル株も11%増やした。

資源株や金融株への投資は、バフェット氏の世界経済への強気の見方を映している可能性がある。インフレ圧力は足元でやや弱まっており、FRBが金融引き締めをするなかでも経済を冷やしすぎないソフトランディング(軟着陸)が可能だとの見方が出ている。

こうした見方はバフェット氏に限らない。ホエール・ウィズダムによるとフォーム13Fによる開示ベースで、全投資家の保有資産に占める金融株の割合は6月末に23%弱と3月末から0.55ポイント上昇し、データが比較できる01年以降で最大になった。エネルギー株の割合も4%強と3年ぶりの高水準にある。

売られすぎのIT銘柄にも押し目買いが入り始めている。ハイテク株比率の高い米ナスダック総合株価指数は4~6月に22%安と大幅に下落していた。安値を拾う動きも目立った。

ジョージ・ソロス氏のソロス・ファンド・マネジメントはテスラ株やウーバーテクノロジーズ株を新たに買った。顧客情報管理のセールスフォースを2.4倍に、アマゾン・ドット・コムを大幅に買い増しした。

人工知能(AI)を駆使した運用で知られるツーシグマ・インベストメンツもメタ・プラットフォームズを新規に買い入れ、ポートフォリオの保有比率で3位となった。半導体のエヌビディアも5倍以上に買い増している。

ヘッジファンドのタイガー・グローバル・マネジメントはメタやアルファベットを買った一方で、ズーム・ビデオ・コミュニケーションズなど19銘柄で全売却に踏み切った。保有総額は半減させ守りの姿勢を取るなかで、ハイテク株でも安定性の高い銘柄を選別する様子がうかがえる。

7月以降、「来年は利下げ」の楽観論を背景にした長期金利の低下を受けて、ハイテク株は大幅反発している。ナスダック指数は足元にかけ2割高となり、これらの「押し目買い」は奏功した格好だ。

 

 

ただ、急ピッチな上昇に危うさを感じる投資家も少なくない。

マイケル・バーリ氏が率いるサイオン・アセット・マネジメントは3月末時点で保有していたメタやアルファベットなど株式11銘柄を6月末までに全て売却した。同氏は08年の金融危機時に住宅バブル崩壊を予想し、空売りで大もうけしたことで知られる。

新たに買い入れ、6月末時点で唯一保有するのが、私立刑務所などを運営する不動産投資信託(REIT)のジオ・グループだ。バーリ氏は8月半ば、「エンロン前、9.11前、ワールドコム前のばかばかしい感覚が拭えない」とツイッターに投稿。いまの市場の雰囲気を、エンロンやワールドコムの粉飾決算による破綻前夜と重ね合わせ、リスクを見て見ぬふりをする市場を戒めた。

FRB高官のなかでハト派と目されていたミネアポリス連銀のカシュカリ総裁が「インフレ率が目標を大きく上回っている可能性が高い来年初めに、利下げを始めるとの見方は非現実的だ」と語り、一転してタカ派に転じた。一部でささやかれる楽観論は「行き過ぎ」で、見方が是正された段階で、波乱の相場展開になるリスクはくすぶっている。