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漂流する入試(5)大学「序列」残る過密日程 丁寧な選抜への変革阻む

2月に私立集中

「年内入試」が主流になっても私大の一般入試は2月に集中する。私大は学部や学科別に入試方法などを細分化し、複数回行う。旺文社のまとめによると、2022年1~3月に全国592大学が設定した入試は1万3千件以上に上る。

2月1日から中堅校が始め、中旬からは上位校。より競争力に劣る大学は1月に前倒しする。競合校の日程をにらみながら、実施日や合格発表日、入学手続きの締め切り日を決める。

東京都市大は前期(2月初め)に加え、中期(20日ごろ)、後期(3月初め)の日程も組む。有力私大、国立大前期試験受験組で手応えが悪かった層も囲い込む。入試カレンダーは偏差値序列に縛られた大学の生き残り戦略の結晶なのだ。

日程が過密になれば入試が複雑化し受験生に分かりにくくなる。「丁寧な選抜」より迅速な採点が優先される。それでもスリム化できないのは、機会を増やして多くの志願者と受験料収入を確保したいからだ。

過密化のもう一つの要因が1月中旬の大学入学共通テストだ。私大は共通テストと2月末の国公立大前期試験の間に一般入試の大方を終える必要がある。

入試改革のために共通テストを前倒しすべきだとの声は以前からあった。

文部科学省が20年度の実施を目指した「高大接続改革」の議論では、記述式問題の導入や面接、小論文の活用などで時間と手間をかけた選抜を実現し、一発勝負の弊害をなくすため、共通テストの前倒しや年複数回実施案が浮上した。

これに高校側が「教育課程が終わっていない」「部活動や学校行事に影響」と反発。改革は挫折した。

しかし高校生就職の選考開始は9月で、2人に1人は年内入試組になり、高校生の進路決定時期は早まっている。共通テストのみ1月実施に固執するのは説得力を欠きつつある。

 

私大連「前倒しを」

 

日本私立大学連盟は昨年、共通テストの1カ月前倒しを文科省に要望した。田中愛治会長(早稲田大総長)は「私大が共通テストを1次試験に活用したくても、大学に結果が届くのが2月10日近くでは遅すぎて使えない」と批判する。

一方で駿台予備学校の石原賢一進学情報事業部長は「共通テストの当初の使命は終わった」と見る。「1979年に始まった共通1次試験の狙いの一つは厳しい受験戦争の時代に殺到する受験生の絞り込みだったが、状況は一変した」

さらに「丁寧な選抜のためには秋入学も一つのアイデア」(川嶋太津夫大阪大特任教授)という声もある。入試時期を高校卒業後にずらせるからだ。

入試を巡る環境や受験生の意識も変わっているのに高大接続改革が挫折してから議論は進まない。入試カレンダーを激変させるような抜本改革が今こそ必要だ。