まず変革の躍動感がない。日本では金利が年0.001%の銀行預金通帳を印鑑と一緒に大切に保管して、預金残高を確認しながら人生100年の道のりに備えている人が多い。
一方、米国には老後に向けて色々な組み合わせの年金投資ファンドがあり、株式市場が大幅に下落しても元本はそのままで毎年5%程度のリターンを得られるものもある。米国の相続税に相当する遺産税の基礎控除は1170万ドル(2021年、15億円超)もあり、日本の相続税の基礎控除とは比較にならない。米国人は失敗を繰り返しながらも、高齢になっても攻めることをやめず、経済は成長を続けている。
これに対して日本はただひたすら今あるものを守っている。その結果、近いうちに先進国から脱落しそうだ。そうならないためには全く新しい発想で社会に活力を与え、ダイナミックな成長をもたらす必要があるのではないか。
例えば、個人が環境問題などSDGs(持続可能な開発目標)に寄与する事業に投資した場合、それを非課税で孫に相続させられたり、社会的に有効活用できる不動産を自治体などに30~50年貸し付けたら返却時には非課税で子孫に相続させられたりできないか。親から相続した不動産なども、いま自分が必要としなければ、いったん社会に預けて、地域社会が必要とする施設を作り、社会の利便性を高めるといった仕組みをつくれないだろうか。
相続税に悩む不動産所有者と社会のニーズをうまく組み合わせ、眠っている資産を大胆に動かし、経済が循環する仕組みを考えればいい。発想を変えれば、米国とは違った日本らしい成長戦略を生み出せると思う。
今の日本のように個々が持つ資産を少しずつ取り崩したり、削り取っていったりするだけでなく、長期的に目指す社会を描き、それに向けて眠っていた資産が動き出すような仕組みをつくれば、経済が活性化して社会に躍動感も生まれるだろう。
コメントをお書きください