オリックス、企業投資1兆円に拡大 3年で3倍、大型事業切り離しに本格参入

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借り入れコストの低さや柔軟な投資戦略でファンドなどとの違いを出し、投資先の企業を束ねてグループの新たな事業分野に成長させたい考え。

 

オリックスはリースや不動産、保険などの事業と並行して、自己資金で事業投資を手掛ける。業種を問わず、企業価値で数百億円の会社を買収し、人材を派遣して経営にあたる。

投資先の多くは価値を高めた後、新規株式公開(IPO)などを通じて資金回収するが、そのままグループに取り込む場合もある。

2022年3月末時点の投資先は酪農・農業機械のコーンズ・エージー(北海道恵庭市)や地理情報システムのインフォマティクス(川崎市)など17社で、資産規模は合計で約3100億円にのぼる。事業投資部門の税引き前損益は21年3月期が118億円の黒字、22年3月期が3億7800万円の赤字だった。

25年3月期をめどに事業投資部門の資産規模を3倍強の1兆円まで積み上げる計画だ。22年3月末のオリックス全体の営業資産約12兆円の1割弱にあたる規模となる。新たに1件あたり1千億~数千億円のカーブアウト案件に投資する。

国内では大企業による子会社売却が増えているが、買い手は資金力のある外資系ファンドにほぼ限られていた。オリックスは他の国内系ファンドなどとも組みながら「売却先の新たな選択肢を提示できるようにする」(入江修二専務執行役事業投資本部長)。

ファンドと比べたオリックスの強みは大きく2つある。一つが借り入れコストの低さだ。オリックスの米S&Pの信用格付けはシングルAマイナス。企業買収時は原則LBOローン(買収先の資産や収益を担保とする融資)を借りるものの、金利負担はオリックス本体での調達時と同じく低いという。

もう一つが柔軟な投資戦略だ。ファンドが投資先を通常3~5年で転売するのに対し、オリックスはさらに長い期間保有できる。重点分野のヘルスケアやIT(情報技術)、物流などの業種では「複数社を買収し、オリックスの新たな事業部に成長させる」(入江専務)ことも視野に入れる。

事業承継案件にも年数百億円ずつ取り組む。将来転売しない可能性もあるため、売却先として事業会社ともファンドとも異なる特徴を持つ。後継者不足が深刻化するなか、オーナー経営者に第3の選択肢を提供する。

今後の懸念材料としてインフレを挙げる。投資先は内需企業が多いため、原材料高などの影響を受けやすい。景気後退懸念から金融機関が企業買収向け融資に慎重になる恐れもある。

(和田大蔵)