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「ダーク」の宇宙 宇宙物理学者 佐藤勝彦

「星空を眺め、夜空の彼方(かなた)に何があるのか? などと思いを巡らせては如何(いかが)か」と先日書いた。そりゃあ、星や星の集まりである銀河などがずっと続いているのではないのか、とすぐ思われたかもしれない。その通りなのだか、星や銀河などよりケタ違いに多いモノが宇宙には存在している。それはダークマターとダークエネルギーだ。

どちらも光や電波では見えないので「ダーク」という名前がついている。宇宙の中で星などの質量の割合はたった5%、ダークマターは25%、ダークエネルギーは70%だ。夜空の彼方にあるほとんどのものは、目には見えないダークなものなのだ。

なぜ見えないものがあることがわかったのか? それは星や銀河の動きからだ。ダークマターは銀河や銀河団を取り囲むように分布しているので、星や銀河はその重力を受けて動く。かつては燃え尽きた星やブラックホールではないかと考えられていたが、今は私たちの体をすり抜けているような未知の素粒子という説が有力だ。一方、ダークエネルギーは宇宙を一様に満たして宇宙の膨張を加速させている謎のエネルギーだ。宇宙が膨張していることはおよそ100年前から知られていたが、万有引力で膨張は減速していると考えられていた。しかし20年あまり前に、およそ60億年前から膨張は加速に転じたことが分かった。

地上大型望遠鏡や宇宙望遠鏡などの観測で天文学は飛躍的に進み、星、銀河などの宇宙の姿は精密に描き出されてきたが、新たな謎を見つけたのだ。知れば知るほど、知らないことが見つかる。謎を見つけることが科学の進歩ともいえる。