FX、円安で「利益」54% 3~7月、「損」は25% 年末に向けて逆風も

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外貨を買った投資家の利益が円安を追い風に膨らみ、FXとしては良好な結果となった。ただ米経済の先行きの不確実性は高まっている。年末に向け円相場の乱高下が増え、投資家にとっての逆風が吹く恐れもある。

 

今回の調査結果によると、3月以降損益がプラスだった人の内訳で最多は10~20%のプラスだった投資家。全体に占める比率は14%だった。

FXでは円売りの持ち高が多く、円安が進むと利益を得やすいのは事実だ。ただ6年ぶりに円安の年となった2021年に、損益がプラスだった投資家が38%にとどまりマイナス(41%)の方が多かった例もある。円下落が久しぶりだったこともあり、個人の間で円売りポジションが円滑に構築されにくかった。

これに対して5割を超える投資家が利益を上げた22年3~7月の数値は、日銀のサプライズ的な追加金融緩和で年末に向けて円が大きく下落した14年の年間数値(損益プラスが55%、過去10年で最高)とほぼ同じだ。

22年3~7月は当初1ドル=115円程度だった円が一時140円近くまで下落するなど円安が様々な通貨に対して進んだ。対ドルの円安はほぼ一本調子で進行。円売り持ち高のスムーズな形成で投資成績が良くなった。

今後も円安のトレンド自体はしばらく続くとの見方も根強い。米利上げが続き金利面のドル優位は維持されそうだからだ。「円高サイクルへの転換は23年春以降」と三菱UFJモルガン・スタンレー証券の植野大作氏。

ただ今後大幅な利上げによる米景気悪化予想が広まる局面もありそうで、円相場乱高下のリスクもある。そこで問題になるのは、FX投資家の相場予想は足元の動きに引きずられる後追い的なものになりがちな点だ。

外為どっとコムの顧客向け調査では、毎月中下旬に「今後1カ月のドル円相場の方向」の予想を聞くが、うち円安と答えた比率はそのときに円が下落していると高くなりがちだ。こうした予想に基づく投資は、トレンドが定まっている局面では問題がないが、相場が思わぬ方向へ乱高下する局面では利益を得にくい。

実際、7月下旬の調査では、今後1カ月は円安方向との予想が6割を超えた。前月より低下したものの、7月中旬に一時140円近くに円が下落したことを背景に高水準を維持した。だが、8月初めにかけて円は一旦130円台に上昇、損をした投資家がいたようだ。似た現象は増えるかもしれず、「今後取引は難しくなりそうだ」(外為どっとコム総合研究所の神田卓也氏)という。