https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB133G30T10C22A4000000
3月末現在、日本には3つのNISAがあります(図1)。日本に住む20歳(2023年から18歳)以上の成人が利用できるのが一般NISAとつみたてNISA。そして20歳(23年から18歳)未満の未成年者が利用できるのがジュニアNISAです。
このうち一般NISAが23年に終了するのに伴い、24年に新NISAが創設され、28年まで投資できるようになります。今回は新NISAを解説します。
まずは14年にスタートした一般NISAのおさらいから。一般NISAでは口座内で上場株式などを購入すると売却益や配当などが非課税になります。上場株式のほか公募株式投資信託や上場投資信託(ETF)、不動産投資信託(REIT)などが対象です。非課税期間は最長5年で投資枠上限は年120万円です。
非課税投資枠は上限年122万円に
24年に始まる新NISAは「2階建て」です(図2)。投資上限額や一部投資対象は異なりますが、つみたてNISAと一般NISAを合体させたようなイメージです。いま一般NISA口座を開設している人はそのまま24年から新NISAを利用できます。マイナンバーなどを新たに出す必要はありません。
1階部分は積み立て専用
1階部分はつみたてNISA対象商品(7月29日時点で184本)を積み立てで購入します。一括購入は不可。投資枠の上限は年間20万円です。
2階部分では一般NISA対象商品の上場株式や株式投信、ETF、REITなどを購入できます。投資枠の上限は年間102万円で、買い方はスポット購入、積み立てのどちらも可能です。
なお、監理銘柄・整理銘柄に指定されているものや、ヘッジ目的等以外でデリバティブ取引による運用を行う投信などは対象外となります(内閣府告示で条件は提示されており、具体的な商品リストは投資信託協会が公表予定)。
1階と2階の投資枠の合計は122万円となり、一般NISAに比べて2万円枠が広がります。1階と2階で、つみたてNISAの対象である同じ投信を積み立てることもできますし、1階と2階で別々の投信を積み立てることも可能です。もちろん、2階で個別株やETFなどを購入することもできます。
投資は原則1階→2階の順番
投資する順序も決まっています。利用は原則1階から2階の順です。ただ2階部分で投資するのに1階部分の20万円をすべて使い切る必要はありません。1階部分の一部を利用することで2階部分を利用する権利を得られると考えてください。
ただし1階の枠が残っているからといって、その分2階の枠が増えるわけではありません。1階と2階の箱はそれぞれ別にカウントされます。例えば1階の投資枠20万円のうち12万円しか使わず8万円の使い残しがあっても、2階で利用できるのは102万円のままです。
原則1階を使ってから2階を使う、というお話をしましたが、例外もあります。一般NISAの口座開設者や上場株式などの投資経験者は「1階部分」を利用しないことを事前に証券会社などに届け出れば(1階での積み立て投資はせず)2階だけを利用することもできます。その場合、2階で投資できるのは上場株式(個別株)だけになります。
国内株のほか、NISA口座を開設した金融機関が対応していればアップルなど外国株への投資も可能です。2階でETFやREITを購入するには1階を使う必要があります。また、2階だけ利用する場合には新NISAの年間投資額は2階部分の上限102万円になります。
1階部分は「ロールオーバー」可能
非課税期間5年終了後はどうなるでしょうか。1階で購入した投信は手続きをすると「簿価」でつみたてNISAの非課税投資枠に移管(ロールオーバー)できます。この時の時価評価額がいくらになっていても、移管先のつみたてNISAでの取得価格は当初の購入価格(簿価)となります。
2階部分の金融商品の非課税期間終了時の扱いは未定です(新NISA投資枠は28年までしか決まっていないため)。制度延長がなければ課税口座に時価で払い出されます(売却も可)。
「なぜ新NISAは2階建てなのか」という疑問を抱く人も多いかもしれません。
金融庁によれば「現行の一般NISAは家計の安定的な資産形成の支援に加え、成長資金の供給拡大を目的に設けられました。新NISA、一般NISAが担っている成長資金の供給拡大を促しつつ、あわせて少額からの長期・積み立て・分散投資を行える制度に改組するもの」と説明しています。
そのため、より多くの人が長期・積み立て・分散投資を始めるきっかけとなる1階と、成長資金の拡大の観点から一般NISAの投資対象を一部見直したうえで、上場株式を含む幅広い商品に投資できる2階を合体させた形になっています。ただ、制度自体が複雑になったことは否めません。
次回はすでに一般NISAを利用している人は24年以降どうなるのかをお伝えします。



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