https://www.nikkei.com/article/DGKKZO63278190Y2A800C2FFJ000/
今後5年以内で50軒超が新設される見通し。新型コロナウイルス禍の往来規制が緩和されるなか、経済の回復力が強く中長期的なニーズが見込めるためだ。中心はビジネス需要で、波及効果の大きい「MICE」の取り込みなどが課題になる。顧客の争奪戦が激しくなれば、差異化戦略も必要になりそうだ。
7月8日、ジャカルタのインドネシア大統領宮殿に近接する一等地、メンテンの一画で、米ハイアット・ホテルズ・コーポレーションの最上位ブランドを冠する「パークハイアット・ジャカルタ」が開業した。メディア最大手のMNCグループがハイアットと提携し、本社の敷地内に建設した。
地上37階建のうち上部17階を占める。開業イベントには主要閣僚が出席し、国を挙げてのホテル誘致であることを印象づけた。国内初の六つ星ホテルをうたい、最大級の高級和食レストランを併設するなど話題を提供。ジャカルタ特別州政府はビルの高さ制限を緩和し集客を後押しする。
MNCグループの投資金額は約3兆ルピア(約270億円)。2021年の売上高は16兆7430億ルピアだった。7~8年程度で投資資金を回収できるとみているという。
日本経済新聞の調査によると、ジャカルタでは、21年から26年にかけて13の四つ星以上のホテルが開業する。日本のホテルオークラも、ビジネス街であるCBDに25年に五つ星ホテルをオープンする予定だ。
パークハイアットやオークラのほか、香港を拠点とするランガム・ホテル・アンド・リゾーツが手がける「ランガム・ジャカルタ」はインドネシア初進出となる。
バンコクではジャカルタを上回るペースで中高級ホテルが開業する。ドイツのホテル専門メディア「トップホテルニュース」によると、21年~24年に四つ星が28、五つ星が13の計41が名を連ねる。
米ホテル大手のマリオット・インターナショナルは23年に最上位ブランド「ザ・リッツ・カールトン」を開業する。間もなくオープンする一大商業施設「ワン・バンコク」内に立地し話題を呼ぶ。
21年末にタイ南部のリゾート地ホアヒンで同国に初進出した米ホテル、スタンダード・インターナショナルの「ザ・スタンダード」は、22年7月末にバンコクで国内2店舗目を設けた。
東南アジアをけん引する二大経済大国で中核をなすジャカルタとバンコクで中高級ホテルの開業が相次ぐのは、コロナ禍からの経済回復が順調なことを背景に、商用・観光需要が見込めるためだ。両国とも21年は実質国内総生産(GDP)の伸び率が20年のマイナスからプラスに転換し、23年以降も4%以上の成長を確保しそうだ。
中でも各社が柱に位置づけるのはビジネス関連だ。MNCグループ関係者は「会社の資金に支えられるビジネス客の方が、観光客より負担余力が大きく、星が多いホテルは安心感から好まれる」と語る。
両都市は近年、ホテル業界の注目を集める国際会議や国際展示会をはじめとした「MICE」の需要を期待できる点でも共通する。企業の会議(Meeting)や研修旅行(Incentive Travel)、国際会議(Convention)、展示会など(ExhibitionまたはEvent)の頭文字を合わせた言葉だ。開催前後を含めた観光需要など経済波及効果が大きいとされる。
年を通じて関連会議を開く東南アジア諸国連合(ASEAN)やアジア太平洋経済協力会議(APEC)に加盟し、さらにインドネシアは東南アジアで唯一、20カ国・地域(G20)に加わり、今年のG20の議長国を務める。タイもバンコクで地域最大級の国際モーターショーを毎年開催し、安定した集客を見込める。
もっとも、高級ホテルのラッシュで競争が激化する懸念はあり、迎え撃つ動きもみられる。バンコクの高級ホテル「ルメリディアン・バンコク」は2億バーツ超(8億円超)を投じて全面改装し、リニューアルオープンに踏み切った。高級ホテル「デュシタニ・バンコク」も24年に再開業する見込みだ。
「オークラ・プレステージ・バンコク」などを運営するオークラニッコーホテルマネジメントは、高級ホテルの集積で注目度が高まり、自社ブランドの認知度向上にもつながると期待する。多様化するニーズをいかに取り込むかが大きな課題になりそうだ。

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