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子のダラダラ 仕組みで改善 宿題や生活習慣、親子で「作戦」

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO63291690Z00C22A8KNTP00/

 

日経BPの子育て世代向け情報サイト「日経xwoman DUAL」から、臨床心理士の中島美鈴さんの助言を紹介する。

 

「もっときちんと」といった精神論で子育てをすると親も子もつらい。子育ては認知行動療法の考え方を生かした仕組みを取り入れることでずっと楽になる。

認知行動療法とは解決すべき問題があったときに、原因を人ではなく考え方や行動に求め、考え方などの幅を広げたり、精神論に頼らなくて済む仕組みを作ったりすることで解決していくという心理療法の1つ。もともとは米国の精神科医がうつ病治療のために開発した。子育てでいえば気になることを「子どもの性格のせい」「親である自分の育て方のせい」にしなくてすむのが最大の利点だ。

就学すると子どもが毎日すべきことが格段に増えるが、低学年の子どもが状況を整理してこなしていくのはハードルが高い。「小学生だからこのくらいできるべきだ」「宿題の前にテレビをつけるなんてだらしない」という考え方は認知のゆがみ。多くの親は子どもに「ダラダラしない」と叱るが効果的ではない。

必要なのは「できていない」「宿題とテレビの順番が違う」という事実のみに目を向けて適切な仕組みを考え、「すべきこと」を伝えていくことだ。

仕組み作りの前提は子どもと一緒に考えること。将来、自分で仕組みを作り自己管理できるよう教えていくことも大事な目的だ。

では実際に子どもが帰宅してからの数時間をスムーズに過ごすためには、どんな仕組みを作ればよいのだろうか。5つのポイントで考える。

【(1)子どもの行動を確認し、問題点を把握】子どもと帰宅後の動線を一緒に歩き、行動を確認する。「手を洗うためだけに洗面所へ入るのは面倒だな」「ランドセルが片付かないのは、子ども部屋に置いてからリビングに入る動線が面倒だからだな」など、困り事の裏には原因があることに気づくはずだ。

【(2)動作とそれに必要な物をくっつける】例えばランドセル置き場をリビングにつくる。ダイニングテーブルで宿題をするのであれば、リビングに鉛筆削りや普段使う教科書置き場などもつくるといい。

【(3)ごほうびを活用する】洗面所に行くのを面倒がって、手を洗わないということであれば、おやつを洗面所に置き、手を洗ったらそこでおやつを取ってリビングに入る、というような仕組みにしてしまうのもよい。ごほうびがないとできない子になるのではと不安を感じる人もいるが、「習慣づけができるようになるまでの補助輪」としてやる気を出させるために使う分には問題ない。

【(4)作戦会議は親子一緒に】動線や仕組みを考える際に「ランドセル置き場はどこがいいかな?」などと細かいことも相談する。さらに相談の際は、選択肢は親が出しても決定は子どもに任せる。いくつかの選択肢を目の前におき、イメージした上で決定し体験するという経験を重ねることは、将来自分で仕組みを作り自己決定・自己管理するためにも必要なことだ。

【(5)すべきことを分解する】どうしてもやる気が出ないという場合は、すべきことを分解し、スモールステップで具体的な行動に落とし込み、具体的に指示をすることもコツ。心理学的にも人が物事に取り組む際は、最初の一歩が最もエネルギーが必要だと分かっている。

例えば、宿題をするという行為を分解すると、(1)机に向かう(2)ノートを開く(3)1問目を解く――となる。「まずは机に向かおう」など、スモールステップで指示を出すと取り組むための心理的ハードルが下がるので「これくらいならできそう」と思えるようになる。

大事なことは、親子でチームとして一緒に作戦を立てることと、決定は子どもに委ねること。例えばごほうびをゲーム時間とした場合、「先にゲームをしてから宿題をする」と子どもが決めたとする。親は「それでは失敗するな」と分かったとしても、口を出さず子どもに失敗を経験させよう。そして「うまくいかなかったね。じゃあ、仕組みをどう変えればいいかな?」と次の作戦会議をする。

どんな失敗も悪いのは「仕組み」。そう考えると気持ちも軽くなり、親子でいつも前向きにステップアップしていくことができる。

=詳細は日経xwoman DUAL(https://dual.nikkei.com)6月13日付で

 

 

 

なかしま・みすず 心理学博士。肥前精神医療センターなどを経て現在は九州大学大学院人間環境学府にて学術研究協力員。著書に「悩み・不安・怒りを小さくするレッスン『認知行動療法』入門」(光文社)など