· 

ルイ・ヴィトンのLVMH最高益 高成長支える複合経営

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO63289700Y2A800C2TB0000/

 

服飾からワインまで多様なブランドを擁しながら事業間のバランスを取る複合経営が功を奏している。

 

LVMHの22年1~6月期売上高は前年同期比28%増の367億2900万ユーロ(約5兆円)、純利益は23%増の65億3200万ユーロと、市場予想を上回った。

LVMHは不況時の業績反転が早い。リーマン・ショック直後の2009年12月期には前期比13%減益となったが、翌年には回復。コロナ禍が直撃した20年も3割減益となったが、世界的な金融緩和による資産価格の上昇で富裕層のマネーがブランド品に向かったことで、21年にはコロナ前比で7割増となった。

ブランド企業は大々的な広告宣伝で需要を喚起し、値上げを続けるというのが基本戦略だ。LVMHは22年上半期に「ほとんどのブランドで3~7%値上げした」(ジャン=ジャック・ギオニー最高財務責任者)。

LVMHは服飾の「ルイ・ヴィトン」を中核に、「ディオール」、ワインの「モエ・エ・シャンドン」、宝飾品の「ブルガリ」など、75のブランドを擁する。ブランドを買収し自社の経営戦略を移植、売上高営業利益率を28%まで高めてきた。

傘下5部門の収益性と事業効率を分析すると、それぞれが補い合う関係にあることがわかる。

21年通期の営業利益率と、売上高を在庫(仕掛かり品含む)で割った在庫回転率を、コロナ禍で世界が金融緩和に向かう前の16年と比較した。

5部門は座標内で分散している。大黒柱のファッション・皮革は営業利益率42%、在庫回転率も10回超で、5年前からそれぞれ改善している。

ワイン・スピリッツは果実畑の土壌づくりから販売まで長期間かかるため在庫回転率は低いが、利益率は31%と高い。

安定的にキャッシュフローを稼ぐのが香水・コスメだ。単価が低いが、在庫回転率は8.4回。百貨店や免税店「DFS」など小売業態のセレクティブ・リテーリングは利益率が5年前よりも悪化しているが、顧客との接点を広げている。

ファッション部門は流行に影響を受けやすく、小売部門は景気の変動に影響されやすい。一方、酒類部門は小粒だが、こうした影響を被りにくい。部門間で互いにキャッシュや利益を補い合う「多様でバランスの取れたブランドポートフォリオ戦略の強さ」(ギオニーCFO)によって、市場環境の影響を同時には受けにくくなっている。

19年末比の株価上昇率は4日時点で6割超と、1~6月期決算を好感して22年初めにつけた上場来高値に迫りつつある。

複合経営をより強固にすることにも貪欲だ。時計・宝石部門を補強するため、21年には米宝飾品大手ティファニーを総額158億ドルで買収した。買収後、ビヨンセなど有名タレントを起用、欧州での販売促進にも力を注いでいる。

22年上半期のティファニーは高価格宝飾品群「ブルーブック」などの売り上げが好調だった。米調査会社バーンスタインはティファニーの売上高が30年に19年比2.7倍の106億ユーロに伸びるとみる。同社のルカ・ソルカ氏は「LVMHの戦略である『ルールブック』に沿って進めば、ティファニーのブランド認知度の向上と利益の拡大につながる」と指摘する。

高成長シナリオに影を落とす懸念があるのは、地域リスクだ。

高級ブランドは10年代以降、所得水準の上がった中国の消費者が大量購入したことで拡大してきた。LVMHの21年12月期売上高のうちアジア地域(日本を除く)は35%を占めるようになった。

ただ成長のけん引役となってきた中国では「若者を中心に国産ブランドを好む傾向もでてきており、中長期の成長余地には注意が必要」(三井住友DSアセットマネジメントの青木英之氏)との声もでている。

世界的にもインフレ進行による消費減退リスクがちらつく。事業分散のバランスに加え、地域別の収益バランスの見直しを迫られる可能性もでている。