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スノーピークなど小屋ビジネス活況 リモートワーク支援

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC2737L0X20C22A7000000

 

地方に住みながら都市部の企業に勤める手段にもなり得る。アウトドア大手のスノーピークや住宅メーカーのアールシーコアなどの取り組みを追った。

スノーピークが販売する木製の箱形トレーラーハウス「住箱(ジュウバコ)」は過去1~2年、在庫が不足するほど注文を集めている。車輪が付いており、車でけん引して海や山などに運んで仕事やレジャーを楽しむ「小屋」だ。

仕事や趣味に集中する場

2017年に発売した当初はキャンプ愛好家を利用者に想定していたが、新型コロナの感染拡大に伴い、幅広い層の注目を集めた。購入者はアウトドアのレジャーにとどまらず、仕事や趣味に集中できる場として使っている。

住箱は建築家の隈研吾氏と共同で、自然を楽しむ宿泊ツールとして開発した。室内の面積は約11平方メートルで、木のパネルを組み合わせたデザインが特徴だ。窓や出入り口となるパネルを閉じればシンプルな箱に見える設計となっている。本体価格は440万円で、天井の照明や電源などを追加することもできる。

「小屋ビジネス」は別荘の代替需要の受け皿にもなっている。大阪市に住む男性会社員(39)はセカンドハウスとして、小屋やキャンピングカーの購入を検討している。「在宅勤務が基本となり、ずっと自宅にいるとストレスを感じるようになった」ためだ。自宅の他にも働ける環境を作りたいと考えた。

以前から別荘に憧れを持ち、将来は「自然の中で休日を楽しめるような別荘を構えたい」という夢があった。ただし実際に別荘を購入する金銭的な余裕はなく、数百万円程度で購入できる小屋やキャンピングカーに切り替えた。

DIY需要とも合致

アールシーコアのログハウス「IMAGO」も新型コロナの流行に伴って販売を伸ばしている製品だ。床面積が約10平方メートルの平屋で、趣味用に自宅の庭に置いたり、テレワークの拠点にしたりといった需要を取り込んでいる。

価格は198万円で、木材のパーツを組み立てて完成させる。在宅時間が増え、DIYに興味を持ったファミリー層が主な購入者だ。21年の販売数は147棟で、20年よりも3割増えた。22年1~6月の販売数も前年の同じ時期と比べて7割伸びている。

自然豊かな環境への移住や、休暇と仕事を組み合わせた「ワーケーション」への関心も高まっている。そんな需要をとらえるため、21年秋には車でけん引できる移動式の「IMAGO」の新商品も発売した。床面積は6.51平方メートルと11.27平方メートルの2種類で、価格は386万1000円から複数を用意している。

テレワークが定着した企業に勤める人は都市部にいなくても働けるようになり「地方暮らし」への関心が高まった。自然に囲まれた暮らしを体験できるセカンドハウスのサブスクリプション(定額課金)サービスも登場した。

登録会員枠が満杯に

スタートアップのSanu(東京・中央)は21年11月から、月5万5000円で利用できるセカンドハウスのサービスを始めた。山梨県の山中湖や群馬県の北軽井沢、長野県の白樺湖など、首都圏から車で3時間以内で移動できる場所に計50棟のキャビンを保有し、運営している。

主な利用者に見込むのは、自然に囲まれて暮らした経験が少ない都市部の在住者だ。キャビンは1棟あたり約65平方メートルで、最大4人まで泊まることができる。Wi-Fiも完備しており、最近では休日だけでなく平日にテレワーク目的の利用も伸びている。

Sanuの担当者は「地方との関係を深め、地元経済への貢献や暮らすことへの楽しさを知ってもらいたい」と話す。事前に会員登録して専用のウェブサイトで予約する仕組みだが、現在は会員枠が満席となっており、登録を一時中止している。登録を待っている人は4000人を超えると同社は説明する。

パーソル総合研究所(東京・港)が3月に公表した地方移住者への調査では、移住しても転職しなかった人の割合は53.4%だった。都市部の企業は優秀な人材を手放さないため、地方に住んでも仕事上の不便を感じない環境整備やワーケーションの仕組みづくりが重要になっている。

パーソル総研の井上亮太郎・主任研究員は「自然に囲まれるなど都市部と違う環境に触れることで創造力などが高まり、イノベーションも生まれやすくなる」と地方移住の利点を語る。「場所や生活を変えることで新たな発見につながり、仕事の幅も広がる。新型コロナの流行が収まっても移住や『二拠点生活』を選ぶ人は増える」とみている。

地方への移住を促す支援も広がってきた。パソナグループは人手不足が深刻な地方での「副業支援」を拡大する。全国の自治体と連携し、都市部の働き手を地元企業に紹介する仕組みだ。24年3月までに約100の自治体と包括連携協定を結ぶ計画を持つ。同社は「地方での副業などを通じて関係人口を増やし、将来は移住や定住などにつなげたい」と説明している。

地方への支援策にも

パソナ総合研究所(東京・千代田)が実施した21年11月のアンケート調査では「地方移住への関心が高まった」との回答が27.1%で、20年10月の前回調査より1.9ポイント高まった。年代別にみると、20代では「関心が高まった」という回答が5割に達した。若者の間で地方移住に関心が高まっていることがわかる。

パソナグループの伊藤真人・常務執行役員は「移住や二拠点生活は濃密な関係人口を作れる。将来の労働力不足の改善にもつながる」と語る。一方で「リモートワークは孤独感や閉塞感なども感じやすいため、一定程度は集まる機会を作るなど企業側の工夫も求められる」と指摘する。

新型コロナが流行する以前は都市部で勤務する人が「小屋」を購入し、地方でリモートワークするような形態は想像もできなかった。新しい働き方を多くの企業が容認することは、急速な人口減少に苦しむ地方への支援にもつながる。住む場所を問わない働き方を定着させることは、人材獲得などの面で利点がある。多くの企業が真剣に考えるべき課題だ。

(加藤彰介)