堅調なランニング市場、この先は? 健康志向、アジアで商機 アシックス社長 広田康人氏

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO63165050T00C22A8TB1000/

 

シューズ市場では高い反発力などを持つ「厚底」が人気で、アシックスは独自の厚底シューズで先行する米ナイキを追い上げている。コロナ禍の収束後は「密になる」と避けられていた他のスポーツも人気回復が見込まれる。市場はどうなりそうか、広田康人社長に聞いた。

 

――コロナ禍でランニング市場はどう変化しましたか。

「人々の健康志向が高まった一方で集団スポーツがしづらくなった。ランニングは人との距離をあけながらできるスポーツということで世界的に人気が出た」

――コロナ禍後もブームは続きますか。

「国内では過去に大きなブームが2度訪れたが、いずれも一段落した後もランニング人口は減らなかった。今回も減らないと思う」

「コロナ禍後は中止していた大会も再開され、シューズを新調するモチベーションが生まれて商機となる。アシックスとしては今後もランニングを中心に、シューズ以外にも計測アプリやレース登録サイト、ランナー保険など関連する新規事業を創出したい」

――海外はどうですか。

「コロナ禍で、インドやインドネシアといった人口は多いもののランナーが少なかった『ランニング新興国』でも市場が拡大した。世界のランニング市場は拡大していくと思う。中国でも政策として国民に健康増進を促している。ナイキなどの欧米メーカーや国内メーカーに押されて当社の中国でのシェアは現在3%台。まだ拡大の余地がある」

――厚底のランニングシューズが流行しています。この流れは続きますか。

「続く。厚底は革新的だった。速く走るためには靴を軽くする必要があり、そのためには薄底にすべきだという常識を変えた。今後も開発競争は続くと思う」

――ランニング市場ではナイキが席巻しています。

「我々は挑戦者の立場。ナイキに対抗して出した厚底シューズ『メタスピード』シリーズは6月に新モデルを出した。『頂上から攻めよ』という創業者の精神にのっとり、トップランナーのシェアを高めたい」

――ほかに注目するスポーツはありますか。

「テニスは市場規模が世界的に大きいうえ、他のスポーツに比べて絶対的なライバル企業が少ない。当社は海外のトップ選手と契約しており、ランニングに次ぐ位置づけで注力する。また、競技スポーツではないが、ウオーキングも安全に健康を保てるとして高齢者が取り組みやすく、市場が伸びるはずだ」

 

ひろた・やすひと 80年(昭55年)早大政経卒、三菱商事入社。14年代表取締役常務執行役員、17年関西支社長兼務。18年からアシックス社長。愛知県出身。65歳

ポスト厚底の革新生めるか

 

ランニングシューズ市場は世界で拡大傾向にある。アシックスはランニングを含む「パフォーマンスフットウエア」の市場規模を2021年時点で約650億ドル(約8兆5000億円)と見ている。今後も中国などアジア圏を中心に成長し、26年にはさらに50%程度伸びると予測する。

一方、企業別に見れば17年に厚底シューズを開発した米ナイキを各国のシューズメーカーが追随する形になっている。アシックスなど各社は、より高性能の厚底シューズを開発したり、厚底以外の技術革新を生み出したりできるのか。注目される。