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夏のインターンシップ(就業体験)が採用選考の前哨戦として定着し、本選考以上に倍率が高い場合もあるという。3年生に進級後すぐに就活の準備を始める学生も増えた。一部の大学では業界研究のイベントを前倒しする動きもある。
東北大学3年の女子学生は3月から就活を意識し始め、すでに約30社のインターンに応募した。「自分が何をしたいのかがわからないということが不安」といい、できるだけ多くの企業のインターンに参加し、企業研究を進める。
新潟大学大学院1年の男子学生は13社の選考に申し込んだ。「5月中旬から就活を始め、自己PRやガクチカ(学生時代に力を入れたこと)を考えた」と今春から準備を進める。「インターンに参加すれば早期選考と本選考で2回チャンスがあると考えて早めに取り組み始めた」と話す。
政府は従来、インターンで得た学生の情報を選考に利用しないよう求めてきた。ただ、インターンに参加した学生を対象とした選考を実施している企業は多い。学生側も実態を理解しているため、インターンへの参加意欲は高い。
就職情報大手のディスコ(東京・文京)が5月に実施したインターンの参加意欲に関する調査では、24年に卒業予定の学生1189人のうち94.5%がインターンに参加したいと回答した。
職場を見学したり、実践的な仕事を経験したりできるプログラムへの関心が高く「社員や職場の雰囲気が自分の希望に合致しているか知りたい」といった声があがる。
インターンの説明会も盛況だ。就職情報大手のマイナビが7月中旬に神奈川県内で開催したインターン合同説明会には約1500人の就職活動生が集まった。日本郵便のブースは満席で立ち見する学生もおり、同社人事部の福田貴司課長は「思ったより人が集まっている」と話す。
大学の中には学生にインターンへの理解を促す取り組みを実施するほか、業界研究イベントを春学期に開く動きも現れている。
立命館大学のキャリアセンターは6月、インターンの活用法などを紹介するイベントを初めて開いたところ、200人程度の学生が参加した。
明治大学は22年から業界研究のイベントの実施時期を春学期に変えた。インターンの選考が始まる6月以前に業界研究をしたいというニーズがあると分析し、前倒しを決めた。今年は昨年に比べて参加人数が増えたという。
企業の動きも早まっている。ディスコが6月末から7月初旬に実施した調査では、24年卒の採用広報解禁前に「就職情報会社主催のイベントに参加する」と答えた企業は23年卒に比べて約11ポイント上昇し5割強に達した。一般社員との接触機会の提供も3ポイント弱上昇している。
優秀な学生を囲い込もうと、プログラムの策定にも知恵を絞る。三井住友海上火災保険は商品の考案や過失割合の算出などの業務体験の機会を提供する。日立製作所では専門知識を持つ学生の採用につなげようと、21年からジョブ型のインターンを開いている。
とはいえ、すべての学生が3年の夏から就職活動に全力で臨めるわけではない。マイナビのインターン合同説明会に参加した専修大学3年の男子学生は「情報系の学部で課題が多く、アルバイトもしている。就職活動と両立ができるか不安だ」と話す。

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