東京の空き家で外国人芸術家を支援 ジゴラボ石上社長 TOKYO 次代の案内人

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運営するジゴラボ(東京・千代田)社長の石上明日香さん(38)は「アート作品の展示やイベントへの参加などを通じて地域住民が国際交流できる空間にする」と意気込む。

西武池袋線中村橋駅の商店街を抜けた住宅街にある「Neo House Tokyo」(練馬区)。築約50年の2階建ての空き家をリノベーションし、2019年1月に誕生した。

洋風に改修した1階のリビングは入居者の作品の展示やセミナーに利用する。2階の個室には「江古田」「上石神井」など西武線沿線にちなんだ名が付く。

入居者はここで創作活動をする。賃料は水道・光熱費込みで月8万5千円と12万円(2人部屋)。現在フランス人学生らで満室だ。

「外部のゲストや地域住民を招き、文化交流できるイベントを定期的に開催している」。プロの写真家が手ほどきする親子写真撮影会や和室を利用したお茶会などで入居者と近所の人が親交を深めた。

展示会やイベントはツイッターやインスタグラムなどSNS(交流サイト)で情報発信して集客する。「池袋や新宿など都心は賃料が高く、会場を借りるのが難しい若い芸術家に場所を提供する。空き家の有効活用にもつながる」と話す。

改装時に古い地図や書籍、家族写真が出てきて展示会を開いた。「空き家には様々な貴重な資料が残されている」と実感した。

石上さんはリクルートグループの会社を退職後、建築を学ぶためフランスに留学した。帰国後はビジネス・ブレークスルー(BBT)が運営するオンラインビジネススクールで経営学を学び、両国で絵画などの展示会・展覧会をコーディネートするジゴラボを16年4月に起業した。

スクールの教授を通じて東京の空き家問題を知り、BBTの支援でシェアハウスの新規事業にこぎつけた。知り合いの1級建築士や大工らの力も借りて内外装をリフォーム。家主からは空き家にあったイスなどを譲り受けた。

オンラインショップも開設。滞在した芸術家の油絵や風景写真、ポスター、アクセサリーなど100点を販売する。シェアハウス事業の年間売上高は400万円で、軌道に乗るのはこれから。「行政とも連携を強めたい。来春、都内に複数の拠点を広げるのが目標」と強調する。(近藤英次)

放置が誘発する空き家増加の悪循環

総務省の18年住宅・土地統計調査によると、東京都内の空き家は約81万戸、空き家率は10.6%で、いずれも前回13年の調査より減少した。ただ長期不在や取り壊し予定の空き家(その他の住宅)は約18万戸と、前回より3万戸近く増えた。

空き家は放置すると劣化が進み、景観の悪化や防災・防犯機能低下につながる。周辺の環境悪化で転居が増え、空き家の増加を誘発する悪循環に陥る。結果、地域の活力が低下して病院やスーパーなど生活に必要な施設が維持できなくなる恐れが指摘されている。

東京都は「空き家ガイドブック」をウェブサイトで公開。賃貸や売却など有効活用の仕方、相続前後のノウハウ、相談窓口や支援制度などを網羅している。