目が回るほど忙しかったが、仲間たちと味わうビールやまかないは格別だった。仕事の基本や向き合い方など社会人の原点を学んだ場だ。
「この店で通用するなら社会に出ても楽勝だぞ」と豪語していたのは、ホール長だった松岡伸幸さん。忙しいほど燃えるタイプで、今は独立して不動産会社を経営している。指を骨折してもギプスを巻いた手でフライパンを振っていたのは、テレビ番組制作会社・ケイマックス(東京・港)社長の工藤浩之さん。仕事に真剣で弱音を吐かない人だった。
あれから約40年たつが、表参道のフランス料理店「REIMS YANAGIDATE(ランス・ヤナギダテ)」で開くOB会には毎年15人程が集まる。オーナーシェフの柳舘功君は高校・大学の同級生で、やはりCapriの同門だ。
みな進んだ道や立場は違うが、口調や風貌は誰も変わらない。会えば公園通りのキラキラした光景まで脳裏によみがえるようだ。舌に染みついているのか、当時1番人気だったピリ辛のシシリアンパスタを時折無性に食べたくなる。久しぶりにフライパンを振ってみようか。
(わたなべ・ひさのぶ=きらぼし銀行頭取)
コメントをお書きください