KDDI「おわび返金」一律200円 通信障害で3589万人に

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM2962S0Z20C22A7000000

 

高橋誠社長らが報酬の一部を返納し経営責任を明確化する。過去最大の通信障害はデジタル社会のインフラの脆弱性を浮き彫りにした。通信回線の重要度は増しており、今後は緊急時に他社の回線を借りる「ローミング」の議論が本格化する。

200円(税抜き)は障害のおわびとして支払う。これとは別に通信サービスが全く利用できなくなった271万人に2日分の基本使用料などに相当する金額を返す。いずれも9月以降の通信料金から差し引く。返金額の合計は75億円で、2023年3月期の決算に計上する見通し。復旧にかかった費用は精査中としている。

経営陣は障害の責任を明確化するため役員報酬を減額する。高橋社長は月額報酬の20%分を3カ月、関連役員8人は10%分を1~3カ月それぞれ返上する。29日に開いた記者会見で高橋社長は「全国のお客様に多大な不便とご迷惑をお掛けし深くおわびする。再発防止策の徹底を図り、安定的な運用に全力をあげていく」と謝罪した。

再発を防ぐため高橋社長をトップとする対策会議を7日に立ち上げた。通信網の修繕や障害時の利用者への周知など4項目の再発防止策をつくり、9月末までに社内に導入する。

今回の通信障害は2日未明に発生した。全面復旧までに約86時間かかり、音声通話とデータ通信を合わせてのべ3091万人以上に影響が出た。総務省によると、08年度以降の携帯事業者の障害では約3060万回線に影響した18年のソフトバンクを上回って最大規模となった。同省は事態を重く見て8月にも電気通信事業法に基づく行政指導をする方針だ。

デジタル化の加速で通信回線の社会インフラとしての重要性は高まっている。今回の障害でも個人の利用者のほか、物流や自動車など最大約26万社の企業活動に影響が出た。障害の広がりを最小限に抑えるには他社と連携し、ローミングができるようにすることが欠かせない。総務省はローミングの導入を検討する会議を立ち上げる。