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物価上昇の裾野広く、脱デフレ「賃上げ重要」 経財白書

今の物価上昇局面は過去に比べ幅広い品目が値上がりしていると分析した。それでもインフレ圧力は米欧より弱い。「デフレ脱却には物価と賃金がともに安定的に上昇していくことが必要」と指摘し、労働生産性の向上を課題にあげた。

白書は日本経済について不況下で物価上昇が進む「スタグフレーション」には陥っていないとの見方を示した。「企業収益が高水準にあり、個人消費や設備投資は持ち直しの動きが続いている」ことなどが理由だ。

足元のインフレは海外や過去の局面と比較、検証した。ロシアのウクライナ侵攻で拍車がかかった資源高などにより、日本の物価上昇率は6月まで3カ月連続で2%を超えた。消費増税の影響を除けば約30年ぶりの伸びだ。

同様に資源高だった06~08年ごろと比べると、今は家電や住宅設備などが幅広く値上がりしているのが特徴という。1年前より価格が上がった品目数の割合から下がった品目数を引いた割合は22年5月に45%に達した。前回局面は最高でも32%だった。

総体としては「デフレ脱却に向けて十分とはいえない」と評価した。物価上昇率は6月に9.1%の米国、8.6%のユーロ圏に比べるとなお低水準にある。国内では中小企業の価格転嫁が遅れて「輸入インフレにとどまっている」と分析した。

政府が脱デフレの判断で消費者物価と並ぶ材料に位置づける指標は低迷している。国内の幅広いモノやサービスの値動きを示す「国内総生産(GDP)デフレーター」はマイナス続きだ。

経済の需要と潜在的な供給力の差である「需給ギャップ」は21年もマイナスのままだった。米国は既にプラスに転じている。賃金動向を示す単位労働コストは米国が21年10~12月期に前年同期比4.5%上がったのに対し、日本の伸びは0.5%にとどまる。

賃金はスタグフレーションの回避や脱デフレに向けたカギを握る。白書は「外的要因に起因する一時的な物価上昇ではなく、企業収益の改善が賃金上昇につながり、個人消費や設備投資が増加する下で経済全般の需給が持続的に改善していく好循環を実現する必要がある」と説く。

実質賃金の伸びは2000年以降、労働生産性の伸びを下回る。資源高による海外への所得流出も影響している。投資によって生産性をより高めつつ、生産性に見合った賃金上昇も進めるには、省エネルギーの取り組みなど経済構造の転換も求められる。

白書は、企業が賃金を決める際に物価上昇や労働生産性の伸びなどマクロの経済動向を重視していないことに懸念を示した。「データやエビデンスを踏まえ、適正な賃上げの在り方を官民で共有していくことが必要」と訴えた。