中国の金融破綻リスク 不動産や地方政府にも影 米クレアモント・マッケナ大学教授 ミンシン・ペイ氏寄稿

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO63001470Y2A720C2FFJ000

 

国の規定で預金者1人当たり50万元(約1千万円)まで保護されるが、当局者は預金者の抗議活動を多数の暴漢を送って封じ込めた。

中国では2009年以降、経済成長を促すため借金が大幅に増えた。今や債務残高が国内総生産(GDP)比で264%に達している。金融システムは崩壊していないが、借金頼みのやり方に審判が下る日が間もなく訪れそうだ。危険信号はいくつも表れている。

河南省の銀行の支払い不能は甘い監督、雑なリスク管理、そして腐敗が原因だろう。これは総資産が14兆ドル(約1900兆円)近い全国の中小銀行約4千行に共通する。

多数の小規模銀行が破綻すれば金融部門の安定が脅かされかねない。これまでは何とか持ちこたえたが目下、経済は急減速している。債務の時限爆弾の時計の音ははるかに大きくなってきた。

最も不吉な危険信号は明らかに、借金に苦しむ中国の不動産部門だ。中国恒大集団はすでに部分的なデフォルト(債務不履行)に陥っている。

地方政府も先がみえない。不動産業界の不振で土地の売却収入が減り、税収も落ちている。地方政府は今年、6兆元の歳入不足になる見通しだ。

大手銀行も厳しい。政府の広域経済圏構想「一帯一路」の一環で、大手行は貧しい国々に巨額の貸し付けをしている。借り手が返済に行き詰まれば融資のかなりの部分が焦げ付く公算が大きい。

中国は今回も金融破綻を回避できるかもしれない。ただ地方当局が暴漢を雇って預金者に襲いかからせなければならないような事態が続けば、投資家は銀行の暗い未来を覚悟する必要がある。