https://www.nikkei.com/article/DGKKZO62965320Y2A720C2EAC000/
10年近く務めた弁護士から一転、投資家に転じた。法律の知識を生かし、スタートアップへの出資だけでなく大手企業との提携支援なども手掛ける、「二刀流」のキャピタリストだ。
弁護士の仕事に不満があったわけではない。2010年に森・浜田松本法律事務所に入所。大手企業のM&A(合併・買収)などの案件に従事。金融庁にも出向し、コーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)の指針作りにも携わった。
順風満帆のキャリアに転機が訪れたのは、ロースクール留学のため渡米した16年。米国に加えコロンビアやブラジルなど各地から実務を経験した弁護士が集まり、交流を深めた。
だが日本に関して話題になるのはアニメや京都などの観光地ばかり。「アジア経済の話題で中心になるのは中国のファーウェイや韓国のサムスンだ」。アジアの中で日本は群を抜いていると思っていたが、「影の薄い存在になってしまったんじゃないか」。世界の中での立ち位置を思い知らされた。
一体何が日本に足りないのか。米国で感じたのは新興企業の活力だ。民泊仲介のエアビーアンドビーや配車サービスのウーバーテクノロジーズなどのサービスが日常に入り込み、生活をすぐに変えていく。日本でも法律の知識を生かせるスタートアップが増えているとの話も聞き、帰国後の19年、独立系ベンチャーキャピタル(VC)のSTRIVE(ストライブ)に入社した。
「ゼロからのスタート。これまでの経験があるからといって起業家が簡単に投資を受けてくれるわけではない」。企業にダイレクトメール(DM)を送ったり、SNS(交流サイト)を通じて起業家と接触を図るなど、飛び込み営業のように地道な取り組みも多い。絶対に投資すべきだと思った案件に投資できず、その企業の「ニュースを見る度に後悔する」こともある。
キャピタリストとして約3年、22年春には猫の健康状態や行動履歴を首輪型の端末などで管理する技術を持つRABO(東京・渋谷)と、ユニ・チャームとの資本業務提携を支援した。「世界に足跡を残せるような会社を応援したい」と、日本から世界を変える企業を探している。
(上原翔大)

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