東阪より高利回り 愛知の高層マンション「4割が投資」

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFD205G30Q2A620C2000000

 

最近は物件の値上がり基調を背景に、売却益を見越して一般の人の「半投半住」の買いが広がっている。リニア中央新幹線の開業を見越して、名古屋駅から徒歩圏内で進む高層マンション計画では投資や相続狙いの購入が4割を占めるとの声もある。

 

名駅から西へ徒歩10分。総合地所と三菱地所レジデンスが中村区で2024年の完成を目指している地上19階建ての分譲マンション、リニアゲートタワー名古屋。総合地所は「実態として相続や投資目的と、実際に住む目的の内訳が4対6になるのではないか」と説明する。

リニア中央新幹線の開業こそ、当初計画された27年から遅れる見通し。それでも周辺がにぎわいマンションも値上がりするとの期待が集まる。首都圏からの問い合わせも全体の1割を占める。

中村区では戸建て住宅の購入でも、売却益が意識されている。名駅から地下鉄桜通線で1駅の中村区役所駅から徒歩8分。岩田龍さん(33)は21年夏、築10年の中古戸建て住宅を購入した。「この立地であれば手放す場合も今と同じ程度かそれよりも高い値段で売れるはず。持っていてもいいし、売ってもいい」

東証スタンダードに上場するファーストロジックが運営する投資用不動産情報サイト「楽待」の調査によると愛知県でのマンション投資では、満室時の家賃収入を物件価格で割った表面利回りは東京都や大阪府を上回る。1室ごとのマンション投資では6月時点で東京都が5.6%、大阪府は6.53%。対して愛知県は7.57%だ。

マイナス金利政策の影響や物件の値上がりで利回り自体は低下している。それでもインカムゲインを考えると「東京や大阪と比べると価格は安く賃料による収益性が高い。投資を見据えたニーズは値強い」(不動産SHOPナカジツの五藤智典支店長)。

さらにキャピタルゲインへの期待も高い。楽待によると愛知県で投資対象となるマンション1室の平均価格は、データを最も遡れる13年6月に平均837万円だったが22年6月は1589万円にほぼ倍増した。22年の路線価で愛知県の標準宅地は平均で1.2%上昇した。東京都は1.1%、大阪府は0.1%の上昇だ。物件の値上がりが投資対象としての関心を集め、住宅投資の裾野が一般の人にも広がっているようだ。

22年3月に竣工した野村不動産の「プラウドタワー名古屋錦」は富裕層のセカンドハウスや投資ニーズも高い。野村不動産ホールディングスによると購入目的が「持ち家」との回答は6割にとどまる。

総務省の住民基本台帳によると新型コロナ禍の21年、東京23区では1万4828人の転出超過だった一方、名古屋市は1302人の転入超過だった。「都心部でも一定の緑もあり環境の良さが人を引きつける」(住宅市場調査会社TSONの小間幸一取締役)ことも投資妙味にもつながっている。

もっともすでに過熱感を指摘する声もあがっている。名駅周辺では新型コロナ禍を受けて名古屋鉄道が再開発を延期した。積水ハウスの広報室は、名古屋の不動産市場について「以前のように『建てば売れる』という状況ではなくなってきている。駅からの距離や環境、価格といった特性が明確な物件でないと買い手には響かない」という。

(内山千尋)