新型コロナウイルス禍でテレワークが普及し生活様式が変化したことを好機として、比較的都心から近く自然豊かな点をアピール。お試し移住用住宅としてログハウスや古民家なども活用している。
神奈川県秦野市は、ログハウスのお試し移住用住宅「TANZAWA LIFE」の運用を2021年度から始めている。丹沢の自然を前面に打ち出し、都内や県内の都市部からの移住需要を掘り起こす狙いという。
市北西部の山あいにあるログハウスの空き家を活用した。木造2階建ての2LDK、延べ床面積約65平方メートル、敷地約330平方メートル、インターネット環境も整っている。利用は市外在住者で、移住検討が条件。体験料として2~6泊は一律1万円、7~13泊は一律2万円としている。
22年4~9月の体験予約は22世帯(70人)で、すべての枠が埋まった。「予想以上の反響で、移住実績につなげていきたい」(市の担当者)。22年10月~23年3月の体験予約は9月に募集する。
市は4月から移住・定住活性化プロジェクト「はだの丹沢ライフ応援事業」を開始。市内の住宅取得や空き家リフォームなどに必要な資金として最大60万円を助成する。
県最西部の山北町は、お試し移住用住宅「ホタルの家」を運用している。木造2階建ての古民家を一部増築した延べ150平方メートルの7DK。期間は2~14週間で、体験料は光熱費込みで2万円(2週間単位)としている。
人気が高く、年内の予約枠はほぼ埋まり、キャンセルが出れば、その都度ホームページで募集する。体験者の中から移住者も出ており、町の担当者は「自然豊かな山北の暮らしを体感してほしい」と話している。
箱根町は6~11月にお試し移住体験「箱根トライアルステイ」を開催している。14日間ずつに分けて計10組が参加し、古民家をリノベーションした施設「cotoha(コトハ)」(同町仙石原)に宿泊する。契約事務手数料は光熱費など込みで3万円だ。
町によると、トライアルステイは今回で7回目。21年は定員10組に対して約10倍の応募があり、移住実績もあったという。町の担当者は「体験者に移住意向があっても、希望物件がなかなか見つからないケースもあり、きちんとフォローしていきたい」と話している。
神奈川県西部の自治体が移住・定住促進政策に力を入れているのは、慢性的な人口減少問題がある。小田原市、南足柄市、中井町、大井町、松田町、山北町、開成町、箱根町、真鶴町、湯河原町の2市8町を中心とする自治体だ。
20年国勢調査によると、県西部の自治体で15年国勢調査と比べて人口が増加したのは開成町(7.7%)と大井町(0.6%)の2町だけで、ほかの2市6町は大きく減少した。例えば箱根町は4.2%減、山北町は9.0%減った。ほかに秦野市も3.0%減った。
一方で、新型コロナ禍を受けて都などからの「脱出組」の受け皿となっているのは湘南地域で、藤沢市や茅ケ崎市などの人口は増え続けている。新型コロナ禍の郊外シフトの流れを受けて、県西部の自治体も都民などの移住需要を取り込もうと東京の都心部で移住セミナーにも取り組んでいる。

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