ヒューリック最高益 1~6月経常580億円 ビル売却が好調

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東京都内など首都圏のオフィスビル売却が好調で利益を押し上げたほか、主力のオフィス賃貸事業では新たに取得した大型ビルの賃料収入が寄与した。新型コロナウイルス禍の長期化で部門赤字が続くホテル事業を補った。

 

売上高は約1割増の2400億円程度だったもよう。純利益も前年同期比2%増の370億円弱と過去最高益を更新したとみられる。

業績をけん引したのが、活況が続く不動産売買だ。1~3月期は東急ハンズ池袋店(東京・豊島)の土地や建物を家具大手のニトリへ、東京都港区に持つ物件をマンション開発事業者へそれぞれ売却した。

これらに加えて4~6月期は、横浜市のみなとみらい(MM)21地区に持つオフィスや店舗が入った複合ビルを外資系ファンドに売却。東京都千代田区などで保有する10棟の中規模オフィスビルもまとめて売った。

近年の世界的なカネ余りを背景に、不動産投資に力を入れる海外投資家は増えている。特に日本の場合は日銀の金融緩和政策の継続なども投資の背中を押している。足元の円安・ドル高で「海外勢は強気な値段設定になっている」(業界関係者)といい、好立地の物件は今後も高値での取引が見込まれる。

オフィス賃貸事業では、21年に特別目的会社(SPC)経由で取得した電通本社ビルの賃料収入を計上し始めた。コロナ禍で在宅勤務が定着するなか、ほかの保有物件でも立地の良さなどが入居企業に評価されている。

オフィス仲介大手の三鬼商事(東京・中央)によると、東京都心5区の空室率は足元で6%台と、供給過剰の目安となる5%を上回って推移する。これに対してヒューリックの東京23区の物件は1%以下だ。

一方、ホテル事業はコロナ禍の影響が残る。特に都心部のホテルで稼働率の回復が遅れている。訪日観光客の戻りは鈍く、国内出張や大規模宴会の需要も少ない。静岡県熱海市などで展開する高級旅館「ふふ」シリーズの引き合いは強いが、ホテル事業は1~6月期も部門赤字となったようだ。

1~6月期決算は28日に発表する予定だ。22年12月期通期の業績予想は据え置く公算が大きい。経常利益は前期比5%増の1150億円、純利益は8%増の750億円を見込む。投資用不動産の売買動向が変動しやすいため売上高見通しは非開示だが、増収傾向は続く見込みだ。

持続成長に向けて、中小型ビルの取得・開発エリアを東京都内の銀座や青山、渋谷などに厳選する。人口動態などを考慮し、売上高全体に占めるオフィス比率を家賃収入ベースで現在の6割弱から5割まで落とし、物流施設やデータセンターなどに振り向ける。高級旅館「ふふ」は東京・銀座や長野県の軽井沢などで新規開業する計画だ。

これまで高齢者・健康と観光、環境の頭文字を取って「3Kビジネス」を掲げてきたが、新たに子供教育を加えて「4K」とした。テナントを子供関連に特化した「こどもでぱーと(仮称)」を22年内にも開業する予定だ。