物価の二極化鮮明に モノ4.9%上昇/サービスは下落 6月、全体は2.4%伸び

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO62844840S2A720C2EA2000/

 

プラスマイナスが分かれるのは14カ月連続。モノのインフレは資源高による輸入価格の上昇が直接響いている。サービス価格の低迷は国内の需要の鈍さや賃金の伸び悩みなど、根強いデフレ圧力をくっきり映す。

 

総務省が22日発表した6月の物価上昇率は総合で2.4%と、3カ月連続で2%を超えた。高騰が続くエネルギーは全体で16.5%上がった。電気代は18.0%、ガソリンは12.2%、都市ガス代は21.9%といずれも2桁の伸びが続く。食料は全体で3.7%、生鮮食品は6.5%上昇した。

物価全体を押し上げる寄与度はエネルギーが1.23ポイント、食料が0.97ポイント。合わせると6月の上昇率の9割を占める。

これら上昇傾向が目立つ品目は物価上は「モノ」の分類になる。エネルギーも食品も海外依存度が高く、価格は国際市況や為替相場が影響しやすい。足元の資源高や円安がインフレ圧力となる構図だ。モノ全体でみると、上昇率は資源高が加速した2021年秋に3%を超え、この3~5月は5%を上回った。

統計上の比重がモノとほぼ半々の「サービス」の価格は対照的に低迷が続く。6月は0.3%下落し、16カ月連続でマイナス圏に沈む。上昇が目立つのは、原料高に直面する外食(2.7%)など一部だ。

通信・教養娯楽関連サービスは5.0%下がった。携帯大手による通信料引き下げの一巡後も影響が残る。身近なカット代(0.6%)、ゴルフ練習料金(0.4%)、マッサージ料金(0.6%)などの上昇もサービス物価全体をプラスに押し上げるほどの勢いはない。

モノとサービスの価格動向の二極化は先進国でも日本ならではの現象だ。6月に米国は物価上昇率が全体で9.1%に達し、サービスに限っても6.2%と高い伸びだった。ユーロ圏も全体が8.6%、サービスが3.4%上がっている。

日本でサービス物価が上がらない背景には賃金上昇の鈍さがある。企業が値上げではなくコスト(人件費)を抑えることで稼ぐ流れが続いてきたともいえる。サービス業は一般に労働集約型で、売上高に対する人件費の比率が高い構造もある。

経済協力開発機構(OECD)によると、日本は賃金動向を示す単位労働コストが22年は前年から横ばいの見通し。米国は7.4%、ドイツは3.8%のプラスとみており、賃上げの勢いは差が顕著だ。

帝国データバンクの6月の調査では、製造業は値上げを実施済み・実施予定と答えた割合が79.9%に上った。旅館、理容、娯楽、ソフトウエアなどのサービス業は39.2%にととどまった。「値上げしたいができない」との回答はサービス業が25.3%で、製造業の11.5%を上回った。

サービス業もエネルギーコストの増大などで物価上昇圧力が高まっていることは変わらない。賃上げを伴わずに値上げが先行すれば、家計の購買力が低下し、景気の重荷になる。

コスト高の環境でも企業が安定して成長し、賃上げを続けられるようにならなければ日本経済の地盤沈下はとまらない。競争力のある付加価値の高いサービスを生むには働き手の質を高めて生産性を底上げする必要がある。リスキリング(学び直し)の支援など「人への投資」が重要になる。