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個人年金も繰り下げ増額 商品で差、「お宝」効果大きく

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO62815270S2A720C2PPK000/

 

その多くは受給開始時期を契約時に決めた時点から繰り下げると、受給額を増やせることはほとんど知られていない。過去、運用利回りのメドである予定利率が高かった時期の「お宝保険」では、繰り下げによる増額が特に大きくなりやすい。お宝保険の活用術を探る。

 

「受給開始を65歳から75歳に繰り下げたら、総受給額が1000万円から1550万円に増えることがわかった」。埼玉県の個人投資家、藤浪正実さん(64)は顔をほころばせる。藤浪さんが個人年金を契約したのは1994年で予定利率は年4.75%。65歳から年100万円ずつ10年間受給できる契約だった。

「公的年金は受給時期を繰り下げれば年金額が増える。民間保険もできるのでは」。受給開始が近づいた藤浪さんが営業担当者に問い合わせたのは今年初め。明確な回答が得られず、本社の相談窓口に再質問した。するとしばらくして営業担当者の上司から「繰り下げ可能で、受給額も増える」との回答があった。受給開始を遅らせるほど増額率は高まり、70歳からなら年約125万円(総受給額約1250万円)に、75歳からなら年約155万円(同1550万円)に増やせる。

しかも藤浪さんの契約する商品では、受給開始の時期を現時点で決める必要はなかった。毎年、健康状態などをみながら、さらに繰り下げするか検討できる。藤浪さんは「当面は生活資金に困っていないので繰り下げ状態を継続したい」と話している。

 

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繰り下げによる増額は契約時の予定利率をベースに経費などを考慮して計算する。このため、予定利率が高いほど繰り下げ増額の効果が大きい。予定利率は払った保険料のうち、保険会社の経費を除いた部分に関し保険会社が約束する利率で、会社や商品で異なる。最近は1%を大きく下回る商品が多いが、大手生保の場合、80年代後半から90年代前半は年5.5%程度、90年代中後半も5%弱~3%弱だった。こうした時期の商品がお宝保険と呼ばれる。

個人年金で繰り下げ増額が可能かどうかは会社や商品にもよる。しかし「大半の商品が可能」(日本生命保険)、「65歳から70歳に変更するケースでは保険料払込中の契約で75%程度は可能」(第一生命保険)、「22年度に年金開始の商品で6割程度は可能」(明治安田生命保険)など、大手生保では多くの個人年金が対象とみられる。

繰り下げや増額の仕組みも会社や商品ごとに異なる。藤浪さんのように、受給開始時期を当面決める必要がないこともある。ただ「最初に一度だけ選択可能年数の中から繰り下げる期間を選択」あるいは「最初に予定通りか5年遅らせるかを選択」し、その後は変更できなくなる商品が多いようだ。

最大の注意点は受給を始めてしまうと、その後の繰り下げはできなくなること。受給開始前に手続きが必須だ。契約時に決めた受給開始時期の数カ月前になれば、保険会社は通常、受給手続きの説明資料を契約者に送付する。繰り下げ増額ができる商品なら「年金開始日の変更」という項目があり、これが繰り下げの説明部分だ。

ただ資料の説明は必ずしも丁寧ではない。「繰り下げで一般的に年金額は増加します」と明確に書いていたり、具体的な増額の金額を別途送付する資料で開示していたりする会社もある。一方、「年金開始日の変更が可能」としているだけで、増額になることが資料だけでは読み取れない例も目立つ。

「説明資料を見て相談部門に口頭で問い合わせれば詳しく説明する」としている保険会社が多いが、資料に明確に書かれていなければ問い合わせしないこともありうる。繰り下げにより大きく増やせることを知らないまま、受給を始めてしまった人も多くいそうだ。ファイナンシャルプランナー(FP)の深田晶恵さんは「受給開始前にどんな方式での繰り下げ増額が可能か、必ず確認したい」と話す。

 

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個人年金保険の契約者が受給開始までかなり時間がある時期に、繰り下げ可能かあらかじめ確認したければどうすればいいか。契約時の約款に「年金開始日の変更」という項目があれば多くは繰り下げ増額の対象となる。しかし契約時期によっては対象外になることもあるし約款を無くしている人も多い。やはり保険会社に問い合わせるのが早道だろう。

営業担当者の中には繰り下げ増額の仕組みを知らない人も多いようだ。都内の税理士(61)がこの春、妻の個人年金の繰り下げ増額が可能か営業担当者に聞くと「そんなことをしている人はいません」と言われた。その後、コールセンターに再確認すると、繰り下げで大幅な増額が可能とわかった。「営業職員よりコールセンターへ問い合わせる方が確実だろう」(FPの深田氏)

「据え置き」という別の仕組みがあることにも気を付けたい。受給開始前に送られる説明資料にも通常、この選択肢が表示されている。据え置きは支払われた保険金を当面使う予定がない場合などに保険会社に預け、利息を受け取る手法。しかし、繰り下げと違って現在の利率が適用されるため、各社とも利率はゼロに近い。据え置きはいつでも引き出せる利点はあるが、増額を狙うなら繰り下げを選ぶ方が有利になりやすい。