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予測不能の1秒先も濁流みたいに愛してる 黒木渚氏 青春はイタくて恥ずかしい

 

 

「自分が作りたいものは、音は音、言葉は言葉というように分かれていない」。6作目にして初めての音楽小説では、自身の音楽観や実体験を盛り込み「分身のような」女子高生を主人公にした。

 

高校2年生のシッポは、中学から片思いする森園太陽を追いかけ、軽音楽部に入る。学園祭のライブに向けて練習中、シッポは音楽に熱中する自分に気付く。太陽や親友、近くのコンビニ店員らとの交流を通し、シッポの青春を描き出す。

自身も好きな人がきっかけで音楽を始めた。「大学時代に付き合っていた人の影響でギターを始め、ユニットを組んでライブをしていた。別れた後も一人でステージに立ち続けるくらい音楽が好きになっていた」。シッポの頭の中に浮かぶ光も実体験に基づく。「幼い頃から、未来を想像すると白い光を感じた。ライブでスポットライトを浴びたとき『これだ』と思った」

SNS(交流サイト)でネタを探すことも多い。作中で描写される「レッグカット」と呼ばれる自分の足を傷つける行為もその中で見つけた。「音楽で発散できる自分と異なり、若くて解決方法が分からない人は何に救いを求めるのか。そう考えていたとき、小さな死を体験することで生を実感する若者が多いことを知って小説に取り入れた」

小説で伝えたいのは「みんなイケていない青春だった」ということ。「青春は思い返すとイタくて恥ずかしい。でもシッポみたいにぐちゃぐちゃな流れの中でも自分の軸は見つけられると、悩む若者に伝えたい」

音楽と小説は「どっちも大好きでどっちも逃げ場。2つあってバランスを取る感覚」と語る。「音楽ではぶっ飛んだ曲を作りたい一方で、小説ではリアリティーを大事にしたい。ファンタジーに逃げすぎず、人間をきちんと書き続けたい」(講談社・2145円)