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黒田総裁は21日の金融政策決定会合後の記者会見で円安に懸念を示す一方、為替対応での利上げは「合理的でない」と述べた。企業収益向上と賃上げの好循環につながるまで大規模緩和を続ける。
21日の会合後の外国為替市場で円相場は一時1ドル=138円台後半をつけた。市場には円安の背景として、利上げに動く米国との金融政策の違いを指摘する声がある。黒田総裁は「(指摘は)事実だと思うが絶対的なものではない」とし、「金利格差が拡大していない英国や韓国でも(対ドルで通貨価値が)大きく下落している」と述べた。
利上げによる円安抑制策についても、「少し金利を上げても円安が止まることは到底考えられない。大きな引き上げは経済にダメージとなる」と否定的な見解を示した。
日銀は今回、22年度の消費者物価指数(生鮮食品を除く)の上昇率見通しを2.3%に引き上げた。
政府・日銀が掲げる2%の物価目標に1年を通じて達することを認めた形だが、「企業収益が伸び、賃金が上昇するなかで物価も上昇する好循環になっていない」とし、大規模緩和の必要性を強調した。
国内の賃上げ状況には「賃金上昇が進んでいることは事実だが、物価上昇に追いついていない」との見方を示した。大規模緩和によって「経済が拡大し企業収益が増え、労働需給がよりタイトになっていく」ことが、もう1段階の賃金上昇につながるとの姿勢だ。
ウクライナ危機が続くなか、エネルギー価格の高騰で高インフレにあえぐ欧米を中心に金融引き締めの動きが広がる。世界銀行は6月、22年の世界経済の実質成長率を2.9%と前回1月から1.2ポイント下方修正し、世界的な景気後退リスクが懸念されている。
黒田総裁は欧米の経済状況について「ある程度減速することはあり得る」としながらも、「リセッション(景気後退)やスタグフレーション(景気悪化とインフレの併存)になることを考える必要は今のところない」との見方を示した。
コロナの感染再拡大については「非常に心配している。感染が拡大しており、注意しないといけない」とした。日銀は感染拡大が本格化し始めた20年3月の決定会合以降、企業の資金繰り支援策を順次拡充してきた。今回の会合では9月末に終了を予定する中小企業向けの資金繰り支援策について打ち切りの是非を議論したが、「(終了して)中小の資金繰りに影響が出ると困る。9月に決定する」とし、結論を先送りした。

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